
米国のドナルド・トランプ大統領が、AppleとIntelが米国内で半導体の設計・生産を行うことで合意したと主張し、大きな注目を集めています。もし事実であれば、Appleの半導体戦略だけでなく、米国の半導体産業全体にも大きな影響を与える可能性があります。
ただし、現時点でAppleとIntelの両社はこの発言について公式なコメントを出しておらず、詳細も明らかになっていません。
トランプ大統領が突然の発表
トランプ大統領は自身のSNS「Truth Social」で、「AppleはIntelと協力し、米国内でチップの設計と製造を行うことで合意した」と投稿しました。

しかし、この投稿では具体的にどの半導体を対象としているのか、いつから生産が始まるのか、どの工場を利用するのかといった重要な情報には触れられていません。
そのため現時点では、正式な提携発表というよりも、政権側からの一方的な言及という側面が強い状況です。
Appleが抱える台湾依存という課題
Appleは現在、iPhone向けのAシリーズプロセッサを事実上すべて台湾TSMCに依存しています。
2016年のiPhone 7シリーズ向け「A10 Fusion」以降、AppleのiPhone向けプロセッサはTSMCが独占的に製造してきました。TSMCは世界最高レベルの先端半導体製造技術を持つ企業ですが、一方で台湾海峡を巡る地政学リスクは以前からAppleの懸念材料とされています。
仮に台湾情勢が不安定化した場合、iPhoneやiPad、Mac向け半導体の供給に大きな影響が及ぶ可能性があるためです。
米国生産拡大は現実的な選択肢なのか
TSMCはすでに米アリゾナ州で半導体工場を稼働させていますが、台湾で量産されている最先端プロセスと比較すると数世代遅れています。
現在、TSMCは台湾で2nmチップの量産を進めていますが、アリゾナ工場では4nmおよび5nmプロセスが中心です。今後3nmや2nmへの移行も計画されていますが、本格的な先端プロセス量産にはまだ時間がかかるとみられています。
そうした状況の中、Appleが先端半導体の供給先を多様化するのであれば、選択肢として挙がるのはSamsung FoundryやIntelということになります。
実は長いAppleとIntelの関係
AppleとIntelの関係は決して新しいものではありません。
Macは2006年から長年にわたりIntel製CPUを採用しており、Apple Siliconへの移行が本格化したのは2020年代に入ってからです。また、過去のiPhoneでもIntel製モデムチップが採用されていました。
さらにAppleは2019年にIntelのスマートフォン向けモデム事業を約10億ドル(約1,600億円)で買収。その後、自社開発モデムの開発を進め、2025年には独自モデム「C1」を搭載したiPhoneを投入しています。
Intel株は急騰
市場は今回の発言を好感したようです。
トランプ大統領の投稿後、Intel株は急騰し、一時は過去52週間で最高値を更新しました。最終的には前日比10%超の上昇となり、投資家の期待の大きさを示す結果となっています。
もっとも、現段階ではAppleもIntelも正式な発表を行っておらず、実際にどのような協力関係が検討されているのかは不明です。とはいえ、半導体の国内回帰を推進する米国政府の方針や、Appleのサプライチェーン分散戦略を考えると、今後両社の関係に何らかの進展があっても不思議ではありません。今後の正式発表に注目が集まりそうです。
