
GoogleのPixelシリーズは、今後しばらく大きなデザイン変更を行わない方針を明らかにしています。一見すると退屈に映るこの判断ですが、実はブランドの独自性や持続可能性の観点から見ると合理的であり、むしろ歓迎すべき動きだといえます。
カメラバーが築いたPixelのアイデンティティ
近年のスマートフォンは正面のほとんどがディスプレイで占められ、差別化できる要素は背面カメラの配置くらいになっています。その中でGoogleは「カメラバー」という特徴的なデザインを継続し、Pixelシリーズの強いビジュアルアイデンティティを確立しました。
このカメラバーは単なるデザインではなく、「Pixelはカメラを重視する端末である」というGoogleのメッセージを体現する存在でもあります。AppleやSonyなど他社の最新モデルにも似たデザインが見られるようになり、Pixelが逆に“参照される側”に回りつつあるのは興味深い動きです。
変えないことがもたらすメリット
Googleが今後、少なくとも2027年までは大幅なデザイン刷新を行わないと明言した背景には、ユーザビリティと持続可能性があります。リサイクル素材の採用率を高め、修理のしやすさを向上させるなど、環境配慮と長期利用を前提にした開発を進めており、見た目を頻繁に変えることはこの方針に逆行します。
Pixel 10シリーズでは端末重量の32%以上にリサイクル素材を使用し、アルミフレームは100%リサイクル材を採用。さらにiFixitとの提携による修理パーツの提供やマニュアル公開も進んでいます。7年のアップデート保証とあわせて、長期間使い続けられる製品作りが明確な方向性となっています。
課題はチップ性能とAIの活かし方
一方で課題として指摘されているのが、自社開発のTensorチップの性能です。AI処理には強みがあるものの、ゲームや動画編集といった処理速度では他社の最新チップに劣っているのが現状です。長期利用を前提とするなら、パフォーマンスの底上げは避けられないでしょう。
Googleはこうした弱点をAI機能で補おうとしています。「Magic Cue」をはじめとする新しいAI機能は、今後Pixel体験の中心的存在になる可能性を秘めています。ただし現段階では“必須機能”とまではいかず、今後の進化に期待がかかります。
安定路線は吉と出るか凶と出るか
大きなデザイン変更をあえて行わず、機能面と持続可能性に注力するGoogleの戦略は、ハードウェア単体の派手さには欠けるものの、ブランドの成熟を示す動きともいえます。Pixelは今後も「見慣れた顔」で登場し続ける見込みですが、その裏にある思想は「長く安心して使えるスマートフォン」を届けることにあります。
Googleが掲げる“変えない強さ”が市場でどのように評価されるのか、次の数年間が試金石となりそうです。