
Pixel 10シリーズに搭載されている新プロセッサ「Tensor G5」。その中でも注目されているのが、Imagination Technologies製のPowerVR GPUです。しかし、一部では「クロック周波数が大幅に制限されているのではないか」という疑念が広がっていました。実際にPixel 10 Pro XLを使って検証したところ、その実態が見えてきました。
400MHz常用、必要な場面だけ1.1GHzにブースト

テストでは、GPUクロックの多くが396MHz付近で推移しており、ネット上の報告通りでした。ただし、ゲームプレイ中に描画負荷が高まると瞬間的に1.1GHzまで跳ね上がる挙動が確認されました。中間的な512MHzや633MHzといった数値も一瞬表示されますが、ほとんどが短時間で切り替わり、実質的には「低クロックで待機し、必要な時だけ一気に最大周波数へ引き上げる」動作が基本となっているようです。
電力と発熱を抑える「レース・トゥ・アイドル」方式

一見すると性能を発揮できていないように見えますが、これはむしろスマートフォンに最適化された設計です。GPUが高クロックで動作すると、消費電力は約275mWから480mWへと急増し、熱も一気に上昇します。実際に10分ほどゲームを続けると、本体がしっかり温かくなるのを体感しました。こうした事情から、Googleは長時間の高クロック動作ではなく、短時間で処理を済ませて低クロックに戻す「レース・トゥ・アイドル」戦略を採用していると考えられます。

パフォーマンスは十分、今後の比較にも注目
この挙動はCPUやGPUに広く使われている技術であり、省電力と発熱抑制を両立する上で理にかなっています。つまり、Pixel 10のGPUは「下方修正」されているのではなく、状況に応じて効率よく動作しているのです。もちろん、QualcommのAdrenoやARMのMaliといった他のGPUとの比較ではどのような差が出るのか、今後の検証が必要になりますが、少なくとも「性能を抑えられている」という心配は無用と言えるでしょう。
Pixel 10のGPUは396MHzと1.1GHzを行き来する設計で、消費電力や発熱を抑えながら必要な時に性能を発揮する仕組みでした。派手な数値ではなくとも、ユーザー体験を最優先に考えたGoogleのアプローチが垣間見える結果となっています。