
Qualcommが今年発表した最新世代のモバイル向けハイエンドチップ「Snapdragon 8 Elite Gen 5」。同社は前世代Elite比でCPU性能20%、GPU性能23%向上という大胆な進化を掲げました。その直後に投入された標準版の「Snapdragon 8 Gen 5」ですが、比較対象として2年前の8 Gen 3を持ち出したことで、ユーザーの間では“Eliteと何が違うのか”という疑問が残っていました。
CPUクロックはすでに公表されており、
- 8 Gen 5(無印):2基が3.8GHz、6基が3.32GHz
- 8 Elite Gen 5:2基が4.61GHz、6基が3.63GHz
と明確な差があります。しかし、GPUはどちらも「Adreno 840」と記載されており、仕様面では同一に見える状態でした。
Geekbenchが明らかにした“Eliteとの決定的な差”
複数の実機テストが登場し始め、ようやくその違いが見えてきました。たとえば Moto X70 Ultra(Snapdragon 8 Gen 5搭載)がGeekbenchのOpenCLテストを実行した結果、GPUクロックは384MHzと記録されています。

一方、Realme GT 8 Pro(Snapdragon 8 Elite Gen 5搭載)では、384MHzに加えて768MHzのブーストクロックが記録されています。
つまり、Elite版には存在するブースト周波数が、無印版には存在しないということになります。
Geekbenchの内部データでも、無印版の読み取り値はすべて384MHzで統一されており、明確に上位モデルとの差別化があることが確認できます。
“Elite落ち”したチップ? メモリ仕様にも非公開の差
Qualcommが公式に語ることはありませんが、Geekbenchデータを追う限り、Gen 5(無印)は、本来Elite向けだったものの周波数テストを通過できなかった個体が割り当てられている可能性があります。
さらに、無印版Adreno 840には、Elite版に搭載される18MBの高性能専用メモリ(High-Performance Memory)が存在しないことも分かっています。このメモリは帯域とレイテンシに直接関わるため、GPU性能に一定の差が出ます。
内部識別子も異なっており、
- Elite版 Adreno 840:内部ID “Adreno 829”
- 無印版 Adreno 840:単に “Adreno 840”
と、別物として扱われていることが確認できます。
搭載予定端末も続々──実機での性能差はこれから
Snapdragon 8 Gen 5は、Moto X70 Ultraのほか、OnePlus Ace 6Tにも採用が予定されています。Qualcommはさらに、iQOO、Honor、Meizu、vivoといったメーカーも採用ブランドとして挙げており、今後は多くの実機でEliteとの差が明らかになっていく見込みです。

Eliteと無印──見た目は同じ“Adreno 840”でも、実際の挙動には確かな違いがあることが分かってきました。今後発表される実機のベンチマークやゲーム性能を通じて、両者の住み分けがより鮮明になりそうです。
