
Qualcomm(クアルコム)がこの秋に公開した最上位チップ Snapdragon 8 Elite Gen 5 に続き、より手の届きやすい新型フラッグシップ Snapdragon 8 Gen 5 が正式登場しました。名前に「Elite」がつかないことで中位モデルのように聞こえるかもしれませんが、実際には最上位直系のハイエンド仕様に近い存在です。
では、両者の違いはどこにあるのか。スペックや性能の差を分かりやすく整理してみました。
Eliteとの差は“控えめ”。Oryon CPU採用で処理性能はトップ級
8 Gen 5には、Eliteシリーズと同じ Oryon CPUコアが採用されており、ARM Cortex系ではない独自設計路線が継続されています。ただし、コア構成自体は同じでも、ピーククロックは落とされており、Eliteとの差別化が図られています。
| 項目 | Snapdragon 8 Gen 5 | Snapdragon 8 Elite Gen 5 |
|---|---|---|
| CPU構成 | 2+6(Prime×2、Performance×6) | 同じ |
| 最大クロック | 3.8GHz | 4.6GHz |
| GPU | Adreno 8XX(レイトレ対応) | Adreno 840(高速) |
| NPU | Hexagon NPU(6 scalar / 8 vector) ※初代Eliteと同等 | Hexagon NPU(12 scalar) |
| モデム | Snapdragon X80 | Snapdragon X85 |
| 5G速度(下り) | 最大 10Gbps | 最大 12.5Gbps |
| Wi-Fi / Bluetooth | Wi-Fi 7 / Bluetooth 6 | Wi-Fi 7 / Bluetooth 6 |
| カメラ(ISP) | 20bit Triple AI ISP / 320MP対応 / 8K30fps | 20bit Triple AI ISP / 8K60fps |
CPU・NPUはほぼ同等、GPU性能は約2割差
Qualcommは8 Gen 5の性能比較を「昨年の8 Gen 3」と比べて発表していますが、これは“Eliteとの差を薄めたいため”と見られます。実際の比較は以下の通り。
| 項目 | Elite(対8 Gen 3) | 8 Gen 5(対8 Gen 3) | 8 Gen 5はElite比 |
|---|---|---|---|
| CPU性能 | +45% | +36% | 約6%低い |
| CPU効率(省電力) | +44% | +42% | ほぼ同等 |
| GPU性能 | +40% | +11% | 約20%低い |
| GPU効率 | +40% | +28% | 若干低い |
| NPU性能 | +45% | +46% | ほぼ同等 |
GPUだけ約20%差があるものの、CPUとAI(NPU)はほぼ同レベル。
つまり、日常操作・高度処理・AI生成などで差は感じにくく、ゲームの最高設定で差が生じやすい、という棲み分けになります。
カメラも最新仕様そのまま。搭載機は“実質プチ・フラッグシップ級”
120fpsの4K撮影、320MPクラスのセンサー対応など、8 Gen 5はEliteと同じトップクラスのISP(画像処理プロセッサ)を搭載。ミドルレンジとの差は明確で、AIカメラ性能はElite世代と同等クラス になる見込みです。
さらに、Wi-Fi 7 や Bluetooth 6、XPAN(衛星通信対応基盤)など接続系もElite級。名前に“Elite”がつかないだけで、実質ほぼフラッグシップチップと言える内容です。
想定価格帯は約799ドル前後? 「高すぎないフラッグシップ」へ
価格は未発表ですが、Qualcommは“より幅広い価格帯で採用可能”としており、 799ドル前後のエントリーフラッグシップ(日本なら10万円台前半)に搭載される可能性が高い との見方が広がっています。
GPU性能を控えめにすることで、発熱や電力管理の改善も期待される ため、「高性能だけど熱いスマホ」からの脱却に貢献するかもしれません。
Android向けハイエンド市場は急激に価格が上昇している中、Snapdragon 8 Gen 5は“手の届くハイクラス”として注目されそうです。Eliteシリーズの価格高騰に悩んでいたユーザーに、現実的な選択肢が増えることになりそうです。
