Nothing、スマホOSの開発費を公開──その額はなんと約61億円。ハードウェア開発費を大きく上回る結果に

ロンドン発のスマートフォンブランド「Nothing」が、人気YouTuber MrWhoseTheBoss とのコラボ動画を通じて、独自のスマートフォンOSをゼロから開発する場合にかかる“実際のコスト”を明らかにしました。その総額はなんと 約4,047万ドル(約61億円)。これは同社が過去に試算した、フラッグシップスマホのハードウェア開発費(約2,600万ドル=約39億円)を大きく上回る金額です。


OS開発には「2年規模」の工程と莫大な資金が必要

動画内では、Nothingの開発チームが、OSを一から構築するための全工程を詳細に分解。企画からリリースまでにおよそ 2年近い期間 と、数十名規模の専門エンジニア・デザイナーが関わることが紹介されました。

まずは、要件定義やUI設計などを詰める「計画フェーズ」に約2か月。その後、Androidのオープンソース版であるAOSPをベースにしたプラットフォーム開発に約6か月を要します。続く品質保証(QA)とセキュリティ検証にも半年ほどが費やされ、さらにハードウェアへの最適化とチューニング作業に3か月。最後にプリインストールアプリの組み込みや初回アップデート準備を経て、ようやく完成となります。


開発費の8割以上がエンジニアリングとデザインに

Nothingによる試算では、総額のうち 約3,400万ドル(約51億円) がエンジニアリングとデザイン関連費に充てられるとのこと。そのほか、クラウドGPUやR&Dツール、ユーザーテスト、ライセンス料、検証機材などが数十万ドル単位で積み上がり、さらに予備費として15%の“バッファ”を加えると、最終的に4,000万ドル超のコストに達します。

つまり、ハードウェアの製造よりもソフトウェア開発の方が、企業にとっては遥かに重い投資負担となるのです。


なぜNothingはAOSPベースを採用するのか

動画内では、Nothingがなぜ完全な独自OSではなく、Androidオープンソースプロジェクト(AOSP)を基盤にしているのかについても説明されています。単なる「ランチャーアプリ」は見た目だけを変えるものにすぎませんが、OSレベルの開発ではメモリ管理やセンサー制御、通信、電力効率など、システム全体の挙動を定義する必要があります。

完全新規のOSを作る場合、HuaweiのHarmonyOSのように 4年以上の開発期間 と、今回の試算をはるかに上回るコストが発生する見込みです。AOSPを利用することで、NothingはGoogleのエコシステムへのアクセスを維持しつつ、独自のUIやAI機能を柔軟に追加できるというメリットを得ています。


Nothingの試算は、スマートフォンの開発において「ハードよりもソフトが主役」であることを改めて示すものとなりました。デザインやカメラ性能が注目されがちなスマホ業界ですが、約61億円という数字は、OSの完成度を支える裏側の努力とコストの大きさを物語っています。

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Nothing/CMF Phone
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