
インド有力経済紙「The Economic Times」は、関係者の話として、フォックスコン傘下の弘騰精密工業(Hon Teng Precision)が、インド・テランガナ州にある工場でレアアースの供給不足に直面していると報じました。AppleのAirPodsを生産するこの拠点では、中国本土によるレアアース輸出規制の影響で、特にジスプロシウムの確保が難しくなっているとのことです。
生産ラインは稼働継続中と説明
報道によると、弘騰側は「生産ラインに目立った停止はない」としていますが、同工場はAppleが中国依存からの脱却を目指して昨年4月に稼働を開始したもので、AirPodsのインド生産はAppleにとっても重要な分散戦略の一環です。
AirPodsには、ネオジムやジスプロシウムといった複数のレアアースが使用されており、これらは主に磁石の材料として活用されます。とりわけネオジムは中国を含む限られた国々でしか産出されません。
インド政府も対応に乗り出す
原材料不足を受け、弘騰はテランガナ州政府に状況を報告。これを受けて州政府は、インド商工振興省(DPIIT)に迅速に問題をエスカレーションしました。弘騰は、中央政府の支援を受けて「最終用途証明書(EUC)」の発行手続きが進むことを期待しているようです。
EUCは、戦略物資や転用可能性のある資材などの輸出時に、用途や使用者を証明するために必要な文書です。今回はジスプロシウムの輸出許可取得のために提出されています。
許可待ちの状況が続くも改善の兆しも
別の関係者によれば、弘騰はすでにインド外務省と中国大使館からEUCの発行を受けており、それをジスプロシウム供給業者が中国政府に提出したものの、現時点では輸出許可が下りていないとのことです。
それでも、生産ペースが一時的に低下したものの、現在は徐々に回復傾向にあるとされており、供給体制は維持できているようです。ジスプロシウムのサプライチェーンは一般的にリードタイムが長く、同社は現在保有する在庫で生産スケジュールを調整しながら対応していると伝えられています。
月末までに輸出許可か、慎重な対応続く
弘騰の物流チームは、中国政府からの輸出許可が今月末までに下りると見込んでいるとのことです。通常、申請から許可取得までは45〜50日かかるとされており、それまでは手持ちのレアアース資材で生産を継続する構えです。