米商務長官、Appleに中国製メモリを使わないよう警告

世界的なメモリ不足が続くなか、Appleが中国のメモリメーカーからチップを調達する可能性を巡り、米政府が待ったをかけています。米商務長官のハワード・ラトニック氏は、Appleが中国企業のメモリを採用することに反対する姿勢を明確にし、同社に対しても直接その意向を伝えたことを明らかにしました。

Appleは現在、深刻化するメモリ不足と価格高騰への対応策として、中国のメモリメーカーCXMT(長江存儲科技)の製品をテストしていると報じられています。しかし、中国企業への依存を巡っては米国内から強い反発が出ており、今回の発言によって調達計画の行方がさらに不透明になっています。

米商務長官がAppleに明確なメッセージ

米紙Wall Street Journalの報道によると、ラトニック商務長官は8月14日、テキサス州ヒューストンにあるAppleの新たな製造関連施設を訪問した後、Appleが中国製メモリを調達することについてコメントしました。

同氏は、トランプ政権として中国製メモリの採用を支持していないと説明し、「米国企業が中国製メモリを使うのは望ましくない」という趣旨の見解を示しました。

さらに、こうしたメッセージがAppleに直接伝えられたのかと質問されると、明確に肯定しています。

Appleにとっては、単なる政治的な発言というより、米政府から調達方針の見直しを求められた形と言えそうです。

深刻化するメモリ不足が背景に

AppleがCXMT製メモリの採用を検討している背景には、世界的なメモリ不足があります。

AI関連データセンター向けの需要が急拡大したことで、DRAMやNANDなどのメモリ価格は大幅に上昇しています。PCやスマートフォンなど幅広い製品に影響が及んでおり、Appleも安定したメモリ供給を確保する必要に迫られています。

その選択肢の一つとして浮上したのがCXMTです。Appleは6月27日に、米政府に対してCXMTからMac向けメモリを調達することを認めるよう求めたと報じられており、その後、実際にチップを入手してテストを進めていたとされています。

しかし、CXMTを巡っては米政府側にも警戒感があります。

CXMTは米国の制裁対象リストにも

CXMTは、米国防総省が中国人民解放軍との関係を指摘する企業を掲載する、いわゆる1260Hリストの対象企業となっています。

このリストに掲載されていること自体がAppleによる購入を直接禁止するものではありません。ただし、米国防総省による取引などに制限が設けられるため、米企業がこうした企業から部品を調達することには政治的・経済的なリスクが伴います。

さらにCXMTが米商務省のEntity Listに追加される可能性も取り沙汰されています。もし実際に追加されれば、米国企業との取引が大幅に制限されるため、Appleがせっかく確保した供給ルートも再び断たれる可能性があります。

Appleにとっては、メモリ不足を解消するために中国製チップを採用しても、将来的な規制強化によって供給が止まるリスクを抱えることになります。

米国内の半導体メーカーも反発

Appleの計画には、米国内からも強い反対意見が出ています。

米メモリメーカーのMicronは7月、AppleによるCXMT製メモリの採用を認めないようホワイトハウスに働きかけたと報じられています。また、米下院中国特別委員会のジョン・ムーレナー委員長も、Appleが中国企業との取引を進めることについて「重大な間違い」になるとの見方を示していました。

さらに7月には、米上院議員らがAppleに対して中国製チップの採用計画を撤回するよう求める書簡を送っています。

一方、CXMT側もAppleに対して特別な値引きを行うことを拒否したと報じられています。Appleとしては、中国から新たな供給源を確保することでメモリ不足への対応を期待できますが、価格面でのメリットも限定的になる可能性があります。

AppleだけがCXMT製メモリを検討しているわけではない

今回の問題をさらに複雑にしているのが、すでにCXMT製メモリを採用している海外メーカーの存在です。

8月10日の報道では、HPやAcerが米国外で販売する製品の一部にCXMT製メモリを採用しているとされています。両社が米政府から事前に許可を得ていたのかは明らかになっていませんが、少なくとも現時点で両社がこのことを理由に制裁を受けたという情報はありません。

Appleとしては、競合メーカーが中国製メモリを利用している状況を踏まえ、自社だけが調達を制限されることへの不公平感を訴える余地もあります。

ただ、米政府がAppleに対して中国製メモリの採用に反対する姿勢を明確にしたことで、CXMT製チップをMacなどに本格採用できるかどうかは、これまで以上に不透明になりました。

世界的なメモリ不足が続く一方で、米中間の半導体規制も強まるなか、Appleは価格、供給量、そして地政学的リスクという複数の問題を同時に考慮する必要がありそうです。

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