
年末のこの時期、各社が製品の振り返りや成果をアピールするなか、Nothingは少し違った角度から次の一手を示しました。新型スマートフォンの話題ではなく、同社が見据える「スマホの使われ方」そのものについてです。Nothingは、アプリ中心の体験が終わりを迎えつつあるとして、「ポストアプリ時代」の到来を予告しています。
「アプリを開いて閉じる」操作は限界に来ている
Nothingのソフトウェア製品マーケティングチームに所属するロヒト・パカラパティ氏は、X(旧Twitter)に投稿した記事の中で、現在のスマートフォン体験に強い問題意識を示しました。
アプリを起動し、作業を行い、閉じる。この一連の流れは長年当たり前とされてきましたが、今では重く、遅く、直感的ではないと指摘しています。
特にAIの進化によって、その不自然さがよりはっきりと見えるようになったといいます。一度気づいてしまうと、従来の操作体系には戻れない——そこから「ポストアプリ」という考え方が生まれると説明しています。
ホーム画面が“作業空間”になる未来
Nothingが描く未来像では、ユーザーはもはやアプリを起動する必要がありません。
AIを核にしたホーム画面がそのまま作業空間となり、必要な情報や操作は常に表に出た状態で存在します。
現在は補助的な存在に見えるウィジェットも、将来的にはアプリそのものを置き換える存在になるとしています。天気、メモ、音楽といった用途は、それぞれ専用アプリではなく、進化したウィジェット上で完結するという考えです。
ホーム画面は単なる「起動場所」ではなく、OSそのものへと変わり、必要な機能が常に反応する状態で待機する世界が想定されています。
AI時代に求められるのは徹底したパーソナライズ
もう一つの重要なテーマが、個人最適化です。
Nothingは、すべての人に同じUIを提供するという考え方は、AI時代には成立しないとしています。
使い方や思考、生活リズムに応じて、レイアウトや情報の出方が人それぞれ異なるのが当たり前になるという見方です。
スマートフォンは「誰かが設計した空間」に住むものではなく、「自分自身の作業空間を構築する道具」へと変わっていくとしています。
理想と現実の間にあるギャップ
もっとも、Nothing自身も、このビジョンがすぐに現実になるとは考えていません。
現時点では、アプリは依然として完成度が高く、安定性や機能面でウィジェットやAIベースの操作を上回る場面も多くあります。
ポストアプリの世界は確かに魅力的ですが、それが日常の中で定着するかどうかは、今後の実装や体験の質次第といえるでしょう。それでも、スマートフォンが「アプリの集合体」から「個人のための作業空間」へと進化していく流れは、すでに始まっているのかもしれません。

