
スマートフォンのストレージ拡張手段として、今も多くのミッドレンジやエントリーモデルで採用されているmicroSDカード。ハイエンドでは対応機種がほぼ姿を消し、現在も継続しているのはXperia 1シリーズなどごく一部に限られます。便利な存在である一方、海外メディアXDA Developersは「重要なデータの保存先としては不向き」と警告しています。
いまも使われるmicroSDカード、その立ち位置
microSDカードは、かつて携帯電話や音楽プレーヤー、デジタルカメラで当たり前のように使われてきました。現在でも、Nintendo SwitchやSteam Deck、Raspberry Pi、ドローン、防犯カメラなどでは現役です。価格が安く、小型で扱いやすい点は今も大きな魅力といえます。
しかしXDAは、「便利であること」と「大切なデータを守れること」は別問題だと指摘します。特にスマートフォンで撮影した写真や重要な書類を、microSDカードだけに頼るのは危険だとしています。
モノリシック構造が招く致命的な弱点
microSDカード最大の問題点として挙げられているのが、その内部構造です。多くのmicroSDカードは、コントローラーとNANDフラッシュを一体化した「モノリシック構造」を採用しています。
SSDやHDDであれば、制御チップが故障してもメモリチップを取り外してデータを救出できる可能性があります。しかしmicroSDカードでは、それができません。わずかな曲げやねじれで内部に微細な亀裂が入るだけで、配線が断たれ、データ復旧はほぼ不可能になります。専門業者による高額な復旧作業でも、成功は保証されません。
使っていなくても進むデータ劣化

microSDカードは、電子を閉じ込めることでデータを保持するフラッシュメモリを使用しています。この電子は時間とともに少しずつ漏れ出してしまい、長期間通電しないまま保管すると、データが静かに壊れていく可能性があります。
ここで重要なのは、以前より知られている「安物や偽物のmicroSDはデータ破損しやすい」という話だけでなく、たとえ有名ブランドの高品質なmicroSDカードでも「経年劣化」は避けられず、どこかの時点でデータが破損・消失する可能性があるという点です。
SSDでも同様の現象は起こりますが、microSDカードは高密度かつ低コスト設計のため、データ修復・修正機能が弱く、劣化に対する耐性が低いとされています。引き出しの中に何年も保管していた写真や文書が、久しぶりに開いたら壊れていた、という事態も珍しくありません。
読み込むだけでも起きる「リードディスターブ」
さらに厄介なのが、「書き込み」だけでなく「読み込み」でもデータが壊れる可能性がある点です。microSDカードでは、同じデータを繰り返し読み取ることで周辺セルに電気的な影響が及び、別のデータが破損する「リードディスターブ」が発生することがあります。

SSDであれば、内部コントローラーが自動的にデータを移動・修復しますが、microSDカードのコントローラーは非常に簡素で、こうした予防的な処理を行えません。その結果、ユーザーが気付かないままデータが劣化していくリスクがあります。
では、microSDカードは使うべきではないのか
XDAは、microSDカードそのものを否定しているわけではありません。ゲームデータや動画、音楽など、失っても再取得できるデータや、持ち運びを重視する用途では今も有用です。スマートフォンでも、ストレージ容量を手軽に補う手段として価値はあります。
一方で、代替のきかない写真や重要書類、バックアップ用途には不向きだと明言しています。Xperiaを含むmicroSD対応スマホを使っている場合でも、大切なデータはクラウドや外付けSSD、HDDなど、より信頼性の高い場所に複数保存することが重要です。
便利さの裏にある構造的な弱点や経年劣化のリスクを理解したうえで使い分けることが、microSDカードと長く付き合うための現実的な選択といえそうです。
