
サムスンの巻き返しなるか
半導体業界において熾烈な競争が続く中、サムスンが再び主導権を握るチャンスが訪れているようです。報道によると、同社は次世代のスマートフォン向けSoC「Snapdragon 8 Elite Gen 2 for Galaxy」を、自社の最先端2nmプロセスで量産する可能性があるとされ、現在クアルコムとの協議が進行中だと伝えられています。
従来、Snapdragon 8 Elite Gen 2の製造は台湾のTSMC(台湾積体電路製造)が一括して請け負うと見られており、同社の3nmプロセスが採用されるとの見方が支配的でした。そのためサムスンは初期の受注競争で敗れたとされていましたが、ここにきて2nm世代で巻き返しを図る姿勢を見せています。
鍵を握るのは「歩留まり」と「量産体制」
韓国メディアの報道によれば、Snapdragon 8 Elite Gen 2 for Galaxyの設計は2025年第2四半期中に完了する予定で、本格的な量産は2026年初頭から始まる見通しです。試作段階では、サムスンの華城(ファソン)S3工場にて月産1,000枚規模の小規模生産が計画されているとのことです。
ただし、ここで問題となるのが量産体制と歩留まりの確保です。過去に行われたExynos 2600向けの2nm試作では、歩留まりが30%程度とされており、依然として商業レベルの基準には達していません。それでも、3nm GAAプロセスで苦戦していた時期に比べれば大幅な改善が見られています。
現在、サムスンは月間7,000枚の2nmウェハーを生産可能としていますが、そのうち華城S3工場が担うのは約15%にとどまるとみられています。全体の供給能力を拡大しなければ、クアルコムとの取引成立には至らない可能性もあります。
クアルコムは「デュアルソーシング」を模索中?
クアルコムが今後、TSMCだけでなくサムスンとの「デュアルソーシング(複数サプライヤー活用)」を本格的に採用するかどうかも注目されています。これまでにも同様の戦略が検討されていたものの、サムスンの歩留まり問題などが障壁となり、実現には至っていませんでした。
一方、TSMCはすでに2nmプロセスの受注を開始しており、技術面・信頼性の両面でサムスンをリードしている状況です。時間との戦いの中、韓国企業がどこまで巻き返せるかが大きな焦点となります。
今後の動向に注目
現時点でサムスンもクアルコムも顧客向けの具体的な発注に関しては公式コメントを出しておらず、交渉の進捗や実現可能性は不透明なままです。ただし、サムスンが2nmプロセスにおいて一定の成果を示し始めていることは事実であり、今後の動向に期待が高まります。
半導体業界では、わずかな技術的優位や製造体制の整備が巨額のビジネスに直結します。果たしてサムスンは、クアルコムの次世代チップ製造のパートナーとして返り咲くことができるのでしょうか。続報が待たれます。