
MicrosoftはWindows 11のメモリ管理やシステム処理を最適化し、メモリ容量が8GBのPCでも快適に動作するよう改善を進めています。同社の社内テストでは、8GB RAM搭載PCの応答性が最大20%向上し、マルチタスク性能も最大40%高速化したとのことです。
今回の改善では、メモリ圧縮の最適化やバックグラウンド処理の制御、Microsoft EdgeやMicrosoft 365アプリのメモリ使用量削減など、OS全体にわたる調整が行われています。
8GB RAMでも最大2GB多くのデータをメモリ上に保持
今回の改善で重要なポイントの一つが、メモリ圧縮とストレージへのデータ退避処理の最適化です。
PCで同時に多くのアプリやタブを開くと、物理メモリだけでは処理しきれなくなり、一部のデータがSSDなどのストレージに移されます。しかし、ストレージはメモリよりもアクセス速度が遅いため、必要なデータを再び読み込む際にアプリの動作が遅くなったり、ブラウザーのタブが再読み込みされたりする原因になります。
そこでMicrosoftは、8GB RAM搭載PCに合わせて、データをどの程度圧縮するか、ストレージに退避するタイミング、必要なデータをメモリに戻すタイミングなどを見直しました。
これにより、従来よりも最大2GB多くのアクティブデータをメモリ上に保持できるようになり、バックグラウンドに回したアプリやブラウザーのタブを再び開いた際にも、再読み込みが発生しにくくなるとしています。
スタートメニューやエクスプローラーの応答性も向上
日常的に使用するWindowsの基本操作についても改善が加えられています。
スタートメニューの表示や検索、右クリックメニュー、設定アプリ、Snipping Tool、エクスプローラーなど、ユーザーが操作した直後に反応することが求められる機能を優先的に処理する仕組みを導入しました。
ユーザーが操作している間は、検索インデックスの作成といったバックグラウンド処理の優先度を一時的に下げることで、操作への応答を速めています。
Microsoftによると、2026年1月のアップデートと比較して、こうした操作の応答速度は最大20%向上したとのことです。
また、スタートメニューからMicrosoft Edgeを起動したり、リンクをクリックしたりする際には、ブラウザーがバックグラウンドですでに起動している状態を活用することで、起動速度が最大33%向上するとしています。
Microsoft Teamsについても、8GB RAM搭載PCでは効率モードを標準で有効にできるようになり、起動速度が最大20%向上するほか、実行中のシステムリソース消費も抑えられます。ビデオ会議中にPCの負荷が高くなった場合は、音声処理に必要なCPUリソースを確保するため、カメラの解像度を自動調整する仕組みも導入されています。
EdgeやMicrosoft 365のメモリ消費量も削減
Windows 11本体だけでなく、Microsoft EdgeやMicrosoft 365アプリにもメモリ使用量を削減する改善が加えられています。
8GB RAM搭載PCでマルチタスクを行うテストでは、これらの最適化によってメモリのコミット量の増加を最大900MB抑制できたとのことです。
Word、PowerPoint、Excel、OutlookといったMicrosoft 365アプリだけでも、合計約360MBのメモリを節約できるとしています。
さらに、メモリ容量が8GB以下のPCでは、ウィジェットを開いたときだけ読み込む仕組みに変更されました。これにより、ウィジェットを閉じている間はメモリのコミット量を約200MB削減できます。
Microsoft Edgeでは、使用していないタブをスリープ状態にするまでの標準時間が、従来の2時間から15分に短縮されました。これによって、長時間開いたままになっている非アクティブなタブによるメモリ消費を抑えられます。
2万台以上のPCで動作を検証
Microsoftは今回の最適化にあたり、社内のテスト環境で2万台以上のPCを使用したと説明しています。
WebブラウジングやMicrosoft 365アプリでの作業、ビデオ会議、バックグラウンドでのファイルダウンロードなど、実際の利用環境を想定したテストを実施しました。
また、高速度カメラを使い、スタートメニューを開く操作やアプリの起動操作から、実際に画面へ結果が表示されるまでの時間も測定したとのことです。
こうしたテストに加え、Feedback Hubに寄せられたユーザーからの報告や診断データも活用し、どのような環境で問題が発生しているのかを分析しています。アップデートの配信後も実際の利用データを確認し、改善効果が維持されているか検証を続けるとしています。
2026年の8GB PCは2021年の16GBモデルに匹敵する性能も
Microsoftはメモリ管理の改善だけでなく、近年のCPU性能向上によって、8GB RAM搭載PCでも従来より多くの作業をこなせるようになっている点も強調しています。
同社が委託した第三者機関のテストでは、2026年モデルの8GB RAM搭載Dell XPS 13が、2021年モデルの8GB RAM搭載機と比較して、マルチコアCPU性能で最大94%高速だったとのことです。
さらに、CPU性能やWebブラウジング、背景ぼかしや顔検出などのAIを活用したWeb処理、4K動画の書き出しといったテストでは、2026年モデルの8GB構成が2021年モデルの16GB構成とほぼ同等の性能を示したとしています。
もちろん、大量のデータを扱う作業や多数のアプリを同時に使用する環境では、物理メモリの容量が依然として重要です。Microsoftもメモリ容量そのものが不要になったと主張しているわけではありません。
今後はWindowsやアプリ全体でメモリ使用量を削減
Microsoftは今後の取り組みとして、Windowsの各機能やアプリが共通のコンポーネントを利用することで、重複した処理やメモリ消費を減らす方針も明らかにしています。
例えば、検索機能とウィジェットでWebエンジンを共通化するほか、OneDriveとフォトアプリでも共通の仕組みを利用することで、メモリ使用量を削減する計画です。
また、エクスプローラーやメモ帳、ペイント、新しいWindows検索など、WinUI 3を採用するアプリについても、起動速度の向上とメモリ消費量の削減を進めています。
このほか、PCメーカーや半導体メーカーと協力し、ハードウェア用に確保されるメモリ容量を最適化することで、Windowsやアプリが利用できるメモリを増やす取り組みも進めています。
Windows 11 26H2以降で利用可能
今回紹介されたメモリ管理やパフォーマンスの改善を利用するには、Windows 11 バージョン26H2のビルド26300.9818以降が必要です。
Windows Updateの設定から「利用可能になったらすぐに最新の更新プログラムを入手する」を有効にし、更新プログラムの確認を実行することで、最新の改善を適用できます。
なお、一部の改善はMicrosoft EdgeやMicrosoft 365、Teamsのアプリ更新、Microsoft Store経由のアップデートでも提供されるため、これらも最新の状態にしておく必要があります。
近年はPCのメモリ価格や搭載容量が購入時の重要な判断材料になっていますが、今回の取り組みは、必ずしもメモリを増設しなくてもソフトウェア側の最適化によって使い勝手を改善できることを示しています。特に8GB RAM搭載PCを使用しているユーザーにとっては、日常的な操作やマルチタスクの快適さがどこまで改善するのか注目したいところです。


