
ソニーは、PS5 Pro向けに提供しているアップスケーリング技術「PSSR(PlayStation Spectral Super Resolution)」について、その改良版となるEnhanced PSSRの詳細を明らかにしました。SIGGRAPHでSIEのPrincipal Software Engineerを務めるDaniel Craig氏が説明したもので、特に興味深いのが、ニューラルネットワークのモデルパラメータの約90%が540p以下の低解像度領域の処理に割り当てられている点です。
Enhanced PSSRは、ソニーとAMDが進める「Project Amethyst」の研究成果をベースに開発されたものですが、実際のPS5 Proへの実装はPlayStation向けに独自に最適化されています。
低解像度処理に大量のモデル容量を投入
今回明らかになったEnhanced PSSRの大きな特徴の一つが、ニューラルネットワークの計算能力をどの部分に割り当てるかという設計です。

ソニーによると、モデルが持つパラメータの約90%は、540p以下の解像度で行われる処理に割り当てられています。

一般的には、アップスケーリングでは最終的に高解像度の映像を生成することから、高解像度側の処理が重要だと考えがちです。しかしEnhanced PSSRでは、入力段階となる低解像度の映像から、どのような情報を復元できるのかという部分に多くのモデル容量を投入する設計になっています。
これにより、限られたGPUリソースを効率的に利用しながら、低解像度のゲーム映像からより多くのディテールを再構成することを狙っているとみられます。
Project Amethystの研究成果をPlayStation向けに最適化
Enhanced PSSRの開発では、ソニーとAMDが共同で進めているProject Amethystの研究が重要な役割を果たしています。

ただし、PC向けのアップスケーリング技術をそのままPS5 Proへ移植したものではありません。ソニーはPlayStationのハードウェアに合わせて独自の実装を行っており、PS5 Proの限られた演算リソースを有効活用できるよう調整されています。

PS5 Proでは、通常のPS5よりもGPU性能が大幅に強化されていますが、ネイティブ4Kレンダリングですべてのゲームを処理するには依然として負荷が大きくなります。そこでPSSRのようなAIベースのアップスケーリング技術を利用することで、内部解像度を抑えながら高解像度に近い映像を生成することが重要になります。
既存ゲームにもシステム側から適用可能
さらに注目したいのが、Enhanced PSSRが新規タイトルだけを対象とした技術ではないことです。
既存ゲームについても、システムレベルのオーバーライド機能を利用することで、ゲーム側のアップデートを必要とせず、従来のPSSRをEnhanced PSSRへ置き換えられる場合があります。
つまり、ゲーム開発者が個別にアップデートを配信しなくても、PS5 Pro側のシステム更新によって映像品質が改善される可能性があります。
PSSRはPS5 Proの発売当初から搭載されていましたが、初期バージョンでは細かなディテールの再現や動きのある場面などで改善の余地が指摘されていました。Enhanced PSSRでは、こうした部分をAIモデルそのものの改良によって改善する方向へ進んでいるようです。
今回明らかになった詳細からは、ソニーが単純にGPU性能を高めるだけでなく、AIによる画像再構成をPS5 Proの重要な性能要素として位置付けていることが分かります。
今後PSSRがさらに進化すれば、より低い内部解像度から高品質な映像を生成しながら、フレームレートを維持するというPS5 Proならではのメリットが一段と大きくなる可能性があります。


