
今年の国内ミッドレンジ市場で注目を集めるソニーのXperia 10 VIIとシャープのAQUOS sense10。両機種は価格帯が近く、選択に迷うユーザーも多いモデルですが、スペック面で特に差が大きいのが採用チップです。
Xperia 10 VIIが搭載するのはSnapdragon 6 Gen 3、一方、AQUOS sense10はより上位のSnapdragon 7s Gen 3を採用しており、通常なら“上位チップの勝利”と考えられる構図です。
GPU性能ではAQUOSが圧倒。しかしAIでは結果が異なる
以前のGPUベンチマーク比較では、AQUOS sense10がXperia 10 VIIを大きく引き離すことが判明しており、実際、3Dゲームなどの描画性能ではAQUOSが優勢という評価が一般的です。
ところが今回新たに行われたAI処理性能の計測では、意外な逆転現象が見られました。
Geekbench AIベンチでXperiaが勝利

AQUOSより約3割高い推論スコア
| 項目 | Xperia 10 VII | AQUOS sense10 |
|---|---|---|
| Single Precision (FP32) | 807 | 807 |
| Half Precision (FP16) | 806 | 904 |
| Quantized (INT8以下) | 1660 | 1274 |
このベンチマークは、AI演算方法によって得点が変わる仕組みになっています。
- Single Precision(FP32)
高い精度が求められるAI処理向けで、正確性が重視される領域。両機種はほぼ互角。 - Half Precision(FP16)
精度を抑える代わりに高速化できる方式。AQUOSが優勢で、AI学習や推論処理を効率的にこなせる傾向があります。 - Quantized(INT8以下)
低電力・高速化を目的にデータを圧縮して計算する方式。スマホでのリアルタイムAI(カメラの被写体認識、音声処理など)で最も重要視される項目です。ここでXperia 10 VIIが約3割も高いスコアを記録しました。
Snapdragon 6 Gen 3は、ハイエンド仕様ではないものの、省電力デバイス向けの推論処理に最適化されたNPU構成を持っており、今回の差はその設計思想が顕著に表れた結果と考えられます。
Xperia 10 VII vs AQUOS sense10:AI性能の結論
- AQUOS sense10
FP16性能が高く、精度と速度のバランスが必要な高度処理に向く。画像生成や本格AIアプリに強い傾向。 - Xperia 10 VII
低電力かつリアルタイム処理の「推論型AI」で優位。カメラ認識・音声AI・日常アシスト機能に適した設計。
つまり、「高度なAIアプリの利用を重視するならAQUOS」「スマホらしいリアルタイムAI体験を重視するならXperia」という住み分けが成立します。
GPUではAQUOS、AIは用途でXperia優勢——性能表だけでは語れない、両者の設計思想の違いが浮き彫りになったと言えます。


