
サムスンが次世代モバイル向けプロセッサ「Exynos 2600」に、新たな冷却技術「Heat Pass Block(HPB)」を採用する可能性が高まっています。過去のExynosシリーズで課題とされてきた発熱問題に、いよいよ本格的なメスが入るかもしれません。
新アーキテクチャにより発熱対策を根本から見直し
Exynos 2600は、サムスンが現在開発を進めている2nm GAA(Gate-All-Around)プロセスで製造される次期フラッグシップSoC(システム・オン・チップ)です。同社はこの新プロセスに加えて、冷却効率を大幅に高める新技術「Heat Pass Block(HPB)」を組み込む計画であると、韓国のETNewsが報じています。
このHPBは、従来の構造とは異なり、SoCの上に直接DRAMと冷却層の両方を重ねるという構造を採用。HPBは一種のヒートシンクの役割を果たし、SoCが発する熱を効率よく分散させることで、より高いクロック周波数での長時間動作を可能にする狙いがあります。
FOWLP技術の導入で性能と冷却の両立を実現へ
さらにサムスンは、HPBの上に「Fan-out Wafer Level Packaging(FOWLP)」と呼ばれるパッケージング技術を導入する予定です。これは、チップ周辺のスペースを活用して回路や配線を広げることで、熱耐性を高め、マルチコア性能を最大限に引き出すことができる技術です。
FOWLPはすでに前世代のExynos 2400で採用されていますが、今回のExynos 2600ではHPBとの併用により、さらに一歩進んだ冷却とパフォーマンスの両立が期待されます。
ライバルとの性能競争にどう挑むか
最近のGeekbench 6のリーク情報によると、Exynos 2600の最も高いクロック周波数は3.55GHzとされており、MediaTekのDimensity 9400+に搭載されるCortex-X925にはわずかに届かない水準です。しかし、HPBやFOWLPなどの冷却強化策により、温度管理が安定すれば、より高い周波数への到達や、シングル・マルチコア両面での性能向上が期待できます。
スマートフォンにおける発熱問題は、単なる持ち心地の不快感にとどまらず、バッテリー劣化や安全性の低下といったリスクも伴います。そのため、熱対策は性能向上と同じくらい重要なテーマとなっています。
年内登場の可能性も、Galaxy S26と同時発表か
Exynos 2600は現在プロトタイプの段階にあるとされており、サムスンの2nm GAAプロセスの量産体制が順調に進めば、年末までに正式発表される可能性があります。タイミング的には、2026年初頭に登場予定とされるGalaxy S26シリーズの心臓部として搭載されることが濃厚です。
今後のモバイル向けSoC市場では、QualcommのSnapdragon 8 Elite Gen 2やMediaTekのDimensity 9500など強力なライバルが控えています。サムスンが自社製チップでどこまで対抗できるかは、この新冷却技術の成果にかかっていると言っても過言ではありません。