
サムスン電子が、ファウンドリ(半導体受託製造)事業の巻き返しへ向けて、根本からの立て直しを進めています。背景には、グーグルが次期モデル「Pixel 10」に搭載する独自プロセッサの製造を、長年のパートナーであるサムスンから台湾のTSMCへ変更したという衝撃的な出来事があります。
「グーグル事件」が突きつけた現実
サムスンとグーグルの協力関係は、Pixelシリーズの独自プロセッサ「Tensor」で着々と育まれてきました。元々、クアルコムのAPを使ってきたグーグルがサムスンと共同で「ホワイトチャペル」というプロジェクトを立ち上げ、ExynosをベースとしたTensorを生み出したのです。
その後、5nmから3nmへと進化してきた両社の関係ですが、ここへきて大きな転換点となりました。サムスンの3nmプロセスでの歩留まりや性能、設計リソースなどの問題が影を落としたとされ、次世代となるPixel 10の製造からサムスンが外されることとなったのです。
世界的ライバルとの差が鮮明に
サムスンのファウンドリ事業は、5nm以下の先端プロセスでTSMCと肩を並べることを目指してきましたが、現状その差は広がる一方です。
2025年1~3月期のファウンドリ市場のデータによれば、サムスンのシェアは7.7%となり、昨年同期から減少。一方、TSMCは67%以上のシェアを堅持しており、さらには中華圏メーカーの追い上げも脅威となっています。
戦略再編の中身とは
サムスン電子のデバイスソリューション(DS)部門では、役員クラスが集まり、巻き返しへ向けたグローバル戦略会議が行われています。ファウンドリ事業の再編だけでなく、System LSI部門の一部移管、さらにはファウンドリそのものの分社化案も検討されていると伝えられています。
また、単なるAI分野だけでなく、自動車やロボットなど、成長が見込める新たな応用分野へも舵を切る姿勢が鮮明となっています。
2nm世代で勝負へ
巻き返しのカギとなるのが、年後半から量産予定の2nmプロセスです。参考となる3nmの成功事例が乏しい中、最初の2nmの顧客となるのは、サムスン自身のSystem LSI事業となる可能性が高いと見られています。
その集大成となるのが、来年初頭発表予定の「Galaxy S26」に搭載される次世代AP『Exynos 2600』となる予定です。このモデルが性能面で高い評価を獲得できれば、グーグルやその他の大手テック企業からの信頼を取り戻せるのではないか、という期待も高まっています。
大きな岐路に立たされているサムスンのファウンドリ事業。グーグルからの離脱が単なる一案件の喪失ではなく、事業そのものの方向性を問い直すきっかけとなっています。巻き返しの成否が、サムスンの未来を大きく左右していきそうです。