
次世代ゲーム機となるPS6とXbox Project Helixは、近年の半導体やメモリなどの価格上昇を背景に、現行機を大きく上回る価格になる可能性が指摘されています。両機種とも1,000ドル(約15万8,000円)以上になるとの見方もあり、次世代ゲーム機への買い替えをためらうユーザーが増えることも考えられます。
そうした中、ソニーが新たに公開した特許が注目されています。AIを利用してゲーム映像のデータ量を削減し、通信環境が十分でない場合でも映像品質や応答性を維持することを目指した技術です。実用化されれば、高価なゲーム機を購入せずに次世代ゲームを楽しむための選択肢として、クラウドゲーミングの可能性を広げるかもしれません。
AIでゲーム映像の一部を削り、受信側で再構築
今回の技術は、2026年10月29日に公開されたソニーの特許に記載されているものです。名称は画像データの削減に関する技術で、機械学習モデルを利用して映像の一部を意図的に取り除き、受信側でその部分を再構築する仕組みとなっています。
具体的には、送信側と受信側で異なる2つのAIネットワークを利用します。
まず、送信側では「Decimation Network」と呼ばれるネットワークが映像を一定の領域に分割し、それぞれの領域にスコアを付けます。その評価に基づいて、重要度が低いと判断された部分を映像から取り除きます。
特許の説明では、スコアが0.4を下回る領域などが削除対象になるとされています。これによって、ゲーム映像を構成するデータ量を削減し、ネットワーク経由で送信する情報を少なくできます。
一方、受信側では「Reconstruction Network」が動作します。送信時に取り除かれた部分をAIで補完し、プレイヤーから見て違和感の少ない映像に再構築するという仕組みです。
さらに、目標とする画質や圧縮率をあらかじめ指定することも可能とされています。設定に応じて送信側が削除する領域の数を調整し、受信側で再構築する範囲を変えられるため、通信環境や求める画質に合わせた柔軟な運用が期待できます。
通信量の削減でクラウドゲーミングの遅延を抑制
この技術が実用化されれば、クラウドゲーミングの弱点を改善できる可能性があります。
クラウドゲーミングでは、ゲームの処理自体はサーバー側で実行し、その映像をインターネット経由でユーザーの端末に送信します。そのため、通信速度が不足していたり、回線が不安定だったりすると、画質の低下や映像の乱れ、操作に対する反応の遅れなどが発生します。
今回の技術では、映像の一部を送信前に削除してデータ量を減らせるため、必要な通信帯域を抑えられます。通信環境がそれほど良くないユーザーでも、従来より安定した映像配信を受けられる可能性があります。
次世代ゲーム機の価格が大幅に上昇するのであれば、クラウドゲーミングは高価なハードウェアを購入せずに最新ゲームを楽しむための重要な選択肢になるかもしれません。
また、この技術はクラウドゲーミングだけでなく、PS Portalなどで利用できるリモートプレイへの応用も考えられます。自宅のPS5などで動作させたゲームを携帯端末へ配信する際にも、通信量や映像品質の改善につながる可能性があります。
AIによる映像の再構築には課題も
もっとも、この技術には注意すべき点もあります。
受信側のAIが削除された映像を再構築する際、元の映像には存在しなかったディテールを生成してしまう可能性があるためです。
ゲーム映像では、キャラクターの輪郭や背景の細かなオブジェクト、エフェクトなどが重要になります。AIによる補完が不正確であれば、映像に違和感が生じたり、本来とは異なる描写になったりすることも考えられます。
特に、FPSなどの対戦型シューティングゲームや格闘ゲームでは、わずかな映像の違いや遅延が勝敗に影響することがあります。そのため、こうしたジャンルでは今回の技術によるメリットが限定的になる可能性があります。
一方、瞬間的な操作がそれほど重要ではないシングルプレイヤー向けのゲームであれば、多少の映像再構築による違いを許容しながら、通信量を削減するという使い方も考えられます。
PS6やXbox Project Helixが1,000ドルを超えるような価格になる場合、すべてのユーザーが次世代機を購入できるとは限りません。今回の特許技術が実用化され、クラウドゲーミングやリモートプレイの品質を大きく改善できれば、次世代ゲームを楽しむための新たな低価格ルートになる可能性があります。
ただし、現時点ではあくまで特許として公開された段階であり、実際の製品に採用されるかどうかは分かっていません。

