
かつてAndroidスマートフォン市場で存在感を放っていたHuaweiが、いよいよ自社開発OS「HarmonyOS」の世界展開に乗り出そうとしています。米国の制裁によってGoogleとの協業を断たれてから7年あまり。中国市場を中心に独自のエコシステムを育ててきたHuaweiが、今度は海外市場でもAndroidに依存しない体制を目指します。
Huaweiのコンシューマー事業を率いるRichard Yu氏は、海外メディアとのラウンドテーブルで、HarmonyOSを将来的にグローバル市場へ展開する計画を明らかにしました。ただし、一気に切り替えるのではなく、「ゆっくり、段階的に」進めていく方針だとしています。具体的な開始時期については、現時点では明らかにされていません。
すべての始まりは2019年の米国制裁
HuaweiがAndroidから離れることになった背景には、2019年に米国政府が同社をEntity Listに追加したことがあります。
これは単純に「HuaweiがAndroidを使えなくなった」という話ではありません。米国の規制によってGoogleを含む米国企業とHuaweiとの新たな協業が制限され、Google Play、Gmail、YouTube、GoogleマップなどのGoogleサービスを新しいHuawei端末に提供できなくなりました。また、新機種はGoogleの認証を受けることもできなくなっています。
そのため、制裁後に登場したHuaweiのスマートフォンは、AndroidをベースとしながらもGoogleサービスを搭載しない「EMUI」端末として海外市場で展開されるようになりました。
一方でHuaweiは、こうした状況を単なる制約で終わらせず、独自OSと独自サービスの開発を本格化させます。それがHarmonyOSです。
中国で育てたHarmonyOSを世界へ
HarmonyOSは現在、中国市場のHuawei製スマートフォンやタブレット、ウェアラブルなどで広く利用されています。さらにPCやスマートカーなどにも採用範囲を広げ、単なるスマートフォン向けOSではなく、Huawei製品全体をつなぐエコシステムへと成長しています。
特に重要なのが、2024年に中国で登場したAndroid非依存の「HarmonyOS NEXT」です。HuaweiはAndroidとの互換性に頼るのではなく、アプリやサービスまで含めて自社のプラットフォームを構築する方向へ進んでいます。
そして現在、Huaweiはこのエコシステムを中国だけに閉じ込めるのではなく、海外にも広げようとしています。
「Googleなし」から「Androidなし」へ
Huaweiの戦略を振り返ると、今回のグローバル展開はかなり大きな意味を持ちます。
2019年以降のHuaweiは、Androidそのものを完全に捨てたわけではありませんでした。Googleサービスを利用できなくなった後も、海外向け端末ではAndroidをベースにしたEMUIを使い続けてきました。
ところが現在は、その段階からさらに一歩進み、Androidそのものへの依存を減らそうとしています。
つまりHuaweiにとっては、「Googleサービスを使えないAndroidスマートフォン」を作る段階から、「Androidに依存しないHuawei独自のスマートフォン」へ移行する段階に入ったとも言えます。
もちろん、世界市場でAndroidやiOSに対抗するのは簡単ではありません。OSそのものだけでなく、アプリ、開発者、決済、クラウド、各種サービスなど巨大なエコシステムを構築する必要があるためです。
Huawei自身も短期間での実現を想定しているわけではなく、Richard Yu氏は段階的に進めていく考えを示しています。
それでも、米国の制裁によってGoogleから切り離されたHuaweiが、その結果として独自OSを育て、今度はそれを世界へ展開しようとしているという流れは興味深いものです。
米国の制裁をきっかけにHuaweiがAndroid陣営から距離を置くことになったのは事実ですが、Huaweiはその逆境を独自のOSとエコシステムを構築するための原動力にもしてきました。今後HarmonyOSが中国国外でどこまで受け入れられるのかは、Huaweiのスマートフォン事業だけでなく、AndroidとiOSが二分してきたモバイルOS市場にも影響を与える可能性があります。


