
OpenAIが、スマートフォン向けのコンピュテーショナルフォトグラフィー技術を手がける米Glass Imagingを買収したと報じられています。買収額は3億ドル(約486億円)を超えるとされており、OpenAIがソフトウェアだけでなく、カメラを含む実機ハードウェアの開発にも本格的に乗り出していることを示す動きとして注目されています。
AppleでiPhoneのカメラ開発に携わった人物が創業
Glass Imagingは2019年に米カリフォルニア州ロスアルトスで設立された企業で、CEOのZiv Attar氏とCTOのTom Bishop氏が共同で立ち上げました。
両氏はいずれもAppleで光学・コンピュテーショナルフォトグラフィー関連の開発に携わった経歴を持っています。
特にBishop氏は、iPhoneのポートレートモードを支える技術の開発に関わった人物です。Attar氏もAppleでコンピュテーショナルフォトグラフィー関連のプロジェクトを率いており、以前に立ち上げたLinX Imagingを2015年にAppleへ売却しています。
今回の買収によってOpenAIは、スマートフォンカメラの光学技術とAI処理の両方に精通した人材を獲得することになります。
撮影後ではなくシャッターを切る瞬間に補正
Glass Imagingが開発している「GlassAI」は、一般的な生成AIによる写真編集とは異なるアプローチを採用しています。
カメラで撮影した写真を後から加工するのではなく、撮影時にカメラのレンズやイメージセンサーが抱える光学的な問題をニューラルネットワークで分析し、その場で補正する仕組みです。
スマートフォンの小型レンズでは、レンズ収差や光学系の制約によって画質に限界があります。GlassAIはカメラごとの光学特性を学習することで、こうした物理的な制約をソフトウェア処理によって補正し、小型のスマートフォンカメラでも高い解像感や自然な被写界深度表現を実現することを目指しています。
この技術はすでにDXOMARKのテストで評価されているほか、Honorなどのスマートフォンにも採用された実績があります。
OpenAIの実機開発とカメラ技術が接近
今回の買収が注目される理由は、OpenAIが現在ハードウェア開発を急速に進めているとされるためです。
OpenAIは2025年、Appleの元デザインチーフであるJony Ive氏が立ち上げたデバイス企業ioを65億ドルで買収しました。その後、200人を超えるスタッフが複数のハードウェア製品を開発していると報じられています。
開発対象としては、ディスプレイを搭載しないスマートスピーカーやイヤホン、さらにAIエージェントを中心としたスマートフォンなどが取り沙汰されています。
こうした中で、スマートフォンカメラのリアルタイム処理を専門とするGlass Imagingを買収したことは、OpenAIの今後の実機製品でカメラや視覚認識が重要な役割を担う可能性を示しています。
単純に写真をきれいに撮影するだけではなく、カメラを通じて周囲の状況をリアルタイムに認識し、AIがユーザーを支援するような製品につながる可能性もあります。
IPOを控えてハードウェアへの投資を加速
今回の買収額は、Glass Imagingが前年に付けていた約1億ドルの評価額の3倍に相当するとされています。同社はこれまでにAlphabet傘下のGVやInsight Partners、Future Venturesなどから約3,000万ドルを調達していました。
OpenAIは今後のIPOも取り沙汰される中、ソフトウェア関連だけでなく、開発者向けツールや人材関連企業など、さまざまな分野への投資・買収を進めています。
その中でも今回のGlass Imaging買収は、将来の実機製品に直結する技術を獲得したという点で特徴的です。
現時点でOpenAIは、Glass Imagingの技術をどの製品に採用するのかを明らかにしていません。ただ、AppleでiPhoneのカメラ技術を開発したエンジニアを含む企業を買収したことで、OpenAIが今後投入するハードウェアでは、AIによる視覚処理が重要な要素になる可能性があります。
スマートフォンを含むOpenAIの実機がいつ登場するのかはまだ不透明ですが、今回の買収は同社が単なるAIソフトウェア企業から、カメラやセンサーを含めて現実世界を認識するハードウェア企業へと事業領域を広げていることを示す動きになりそうです。


