
先日、ソニーがPlayStationにおける物理ディスクの廃止を発表し話題となっていますが、今回、その背景にある「圧倒的な経済的理由」がよくわかる動画がX上で注目を集めています。
著名なブルームバーグのゲームジャーナリスト、ジェイソン・シュライヤー(Jason Schreier)氏の解説によると、70ドル(フルプライス)のゲームが1本売れた場合の「企業の手取り」は、物理ディスクとデジタル版で驚くほどの差があるとのことです。
自社タイトル(ファーストパーティ)の場合:ソニーの利益は桁違いに
ソニー(PlayStation)や任天堂、マイクロソフトなどが自社のゲームソフトを70ドルで販売した場合、利益はどのように分配されるのでしょうか。
【物理ディスク版の場合】
- 小売業者の取り分: 約30%(約21ドル)がゲームショップや量販店などに渡ります。
- 製造費など: 約3.50ドルがディスクの製造やパッケージ、物流コストに消えます。
- ソニーの手取り: 残った約45.50ドルとなります。
【デジタル版の場合】
- 自社のデジタルストア(PS Storeなど)で直接販売するため、小売マージンや製造・輸送コストが一切かかりません。
- ソニーの手取り: 70ドル全額となります。
物理からデジタルに変わるだけで、自社タイトルの場合は1本あたりの収益が約54%も増加することになります。ソニーにとってデジタルで買ってもらうメリットは計り知れません。
他社タイトル(サードパーティ)の場合:デジタルなら双方に恩恵
次に、EA(エレクトロニック・アーツ)のようなサードパーティのパブリッシャーが、PlayStation向けに70ドルのゲームを販売する場合です。
【物理ディスク版の場合】
- 小売業者の取り分: 約21ドル
- プラットフォーマー(ソニー)へのライセンス料: 約15%(約10.50ドル)
- 製造・物流費など: 約5%(約3.50ドル)
- パブリッシャーの手取り: 約35ドル
- ソニーの手取り: 約10.50ドル
【デジタル版の場合】 物理ディスクでかかっていた小売マージンと製造・物流コストが丸ごと消え、代わりにデジタルストアの手数料が発生します。
- プラットフォーマー(ソニー)の手数料: 30%(21ドル)
- パブリッシャーの手取り: 49ドル
注目すべきは、デジタル販売になることで、ソフトを作ったパブリッシャーの手取りが35ドルから49ドル(+40%)に増えるだけでなく、ソニーの取り分も10.50ドルから21ドルへと「2倍」に跳ね上がる点です。(※X上の投稿画像ではサードパーティ時の見出しに「ソニーが受け取る額」と記載されていますが、35ドルから49ドルという数字は正確にはパブリッシャー側の利益の推移を指しています)
まとめ:ゲーム業界が物理ディスク廃止を急ぐ理由
シュライヤー氏が結論づけているように、ソニーをはじめとするプラットフォーム企業は、自社ゲーム・他社ゲーム問わず、ユーザーをデジタルストアに移行させる極めて強力なインセンティブ(動機)を持っています。
物理ディスクには「中古で売買できる」「コレクションとして手元に残る」といったユーザー側のメリットがありますが、企業側から見れば、小売業者や製造・物流にかかるコストをまるまる自社や開発元の利益に転換できるデジタル版は、非常に効率的なビジネスモデルです。
ディスクドライブを搭載しないデジタルエディションの普及や、物理ディスク廃止へと向かう最近の動きは、こうしたビジネス構造を考えれば、必然の流れと言えるでしょう。
