
Appleが2026年に投入するとみられる新型チップセット「A20」「A20 Pro」。同社として初めてTSMCの2nmプロセスを採用するこの2つのSoCは、性能・効率ともにこれまでとは次元の異なる進化を遂げると期待されています。
ただし、A20シリーズの進化は「2nm化」だけではありません。内部構造やキャッシュ設計、GPUの仕組みに至るまで、複数の技術が大きく変わる“転換点”となります。
新パッケージ技術「WMCM」の採用でアーキテクチャが一新へ
A20世代で大きく変わるのが、チップの「パッケージング方式」です。従来採用されてきたInFO(Integrated Fan-Out)に代わり、A20シリーズではWMCM(Wafer-level Multi-Chip Module)が導入される見通しです。

WMCMでは、CPU・GPU・Neural Engineといった複数のダイを1つのパッケージにまとめられるため、以下のような利点が生まれます。
- 設計の自由度が大幅に向上:CPUやGPUの構成を柔軟に変更しやすくなる
- 製品展開が拡張しやすい:A20/A20 Proだけでなく、将来のMシリーズにも応用可能
- 電力効率の改善:各ダイが独立して動作し、必要な電力だけを割り当てられる
- 製造コストの最適化:MUF(Molding Underfill)採用により、歩留まり向上と工程削減につながる
次世代iPhoneの性能と生産性の両立を見据えた、大きな方向転換と言えます。
キャッシュ構成はさらに強化 Proは最大48MBのSLCも?

A19世代ではキャッシュが大きく見直されましたが、その流れはA20シリーズでも続きます。過去のアップグレードペースから推測される構成は以下の通りです。
A20(無印)
- パフォーマンスコア L2:8MB
- 省電力コア L2:4MB
- SLC:12MB
A20 Pro
- パフォーマンスコア L2:16MB
- 省電力コア L2:8MB
- SLC:36~48MB
キャッシュの増強は処理効率の改善に直結する要素で、特にProモデルは大幅な強化が見込まれます。
“今年の主役”だった省電力コアはさらに進化へ
A19/A19 Proでは、省電力コアのアーキテクチャが刷新され、同クロック帯ながら整数で約29%、浮動小数点で約22%の向上を記録しました。
A20世代では2nmプロセスの恩恵も受け、同様に省電力コア中心の底上げが実施される可能性が高いとみられています。単純なクロックアップによらない、Appleらしい効率重視のチューニングが続きそうです。
GPUは「第3世代Dynamic Cache」へ エミュレーション環境での改善も期待
GPUメモリをリアルタイムに割り当てるDynamic CacheはA17 Proで初導入され、A19 Proでは2世代目に進化しました。A20 Proではこれが第3世代へ移行するとみられます。
主なメリットは以下の通りです。
- メモリのムダをさらに削減
- GPU利用率の向上
- フレーム時間の安定
- 電力効率の改善
近年、Appleデバイスではエミュレーションを利用したゲームプレイも増えており、第3世代Dynamic Cacheの導入で非ネイティブタイトルの動作が滑らかになる可能性があります。
A20 / A20 Proを搭載するiPhoneはどのモデル?
2026年のiPhone 18シリーズにはA20 Proが広く採用される見込みです。
- iPhone 18 Pro
- iPhone 18 Pro Max
- iPhone Fold(初の折りたたみモデル)
さらに、Appleはラインナップ再編を進めており、従来の無印モデルは**「iPhone 20」として2027年に登場**する可能性が示唆されています。こちらにはA20(無印)が採用される見込みです。
一方、販売不振が続いたiPhone Airシリーズは延期となり、次の登場は2027年以降となりそうです。
次世代iPhoneを支える“基盤そのもの”が進化
A20世代では、2nmプロセスはもちろん、パッケージングやGPU設計、キャッシュ構成など、複数の要素が同時に刷新されます。
単なる性能向上ではなく、iPhone全体の設計思想が次のステージへ移行するタイミングと言えるでしょう。
来年登場するiPhone 18シリーズ、そして再編されたラインナップがどのようにA20/A20 Proを活かすのか、注目が集まっています。
