
今年のハイエンド機で広く採用される見込みの「Snapdragon 8 Elite Gen 5」。処理性能の高さは疑いようがなく、短時間のベンチマークでは歴代トップクラスのパフォーマンスを叩き出しています。しかし、Android Authorityが実際に複数の実機でテストを行ったところ、このチップが抱える“避けて通れない弱点”が浮かび上がりました。
■ REDMAGIC 11 Proは高性能維持、ただし「56℃」という極端な発熱
まず試したのはNubiaのゲーミングスマホ「REDMAGIC 11 Pro」。
結果は見事で、発表イベントでのリファレンス機に匹敵するスコアを記録しました。
ところが問題はその温度です。

- 長時間の負荷で 最大56℃に到達
- 手で持ち続けるのはかなり厳しいレベル
それでも性能が落ち込まなかったのは、液冷+物理ファンというゲーミング機ならではの大掛かりな冷却構造のおかげです。一般的なハイエンドスマホで同じことができるかといえば、答えはNOでしょう。
■ realme GT8 Proは温度抑制を優先、代償は大きな性能低下

続いて最新フラッグシップ「realme GT8 Pro」を同条件で検証。こちらはREDMAGICのような強力な冷却機構はありません。
・最高温度は 44.1℃ に制御
・手に持てるレベルだが、一般的なハイエンド機(約40℃前後)より高め
問題は、熱を抑えるために行われる“サーマルスロットリング(性能制限)”です。
- 過酷な3Dベンチで ピーク性能の28.6%まで低下
- 旧ベンチでも 約38.9%に低下
- さらに、4〜6回テストしただけで前年モデル(GT7 Pro)にも負け始める
つまり、短期的には高速でも、連続負荷では前世代以下の結果になりうるという、看過できない現象が確認されました。
■ 「チップは強い」しかし「冷やせないスマホは性能を活かせない」
ここまでで明らかになったのは、たった一つの事実です。
Snapdragon 8 Elite Gen 5の性能は本物。
しかし、冷却が不十分なスマホではその力を発揮できない。
REDMAGICのようなファン搭載ゲーミング機ならフルパワーを維持できますが、一般的なフラッグシップ機がそこまでの冷却を採用する可能性は低く、結果的には
- “温度優先”→ 性能が落ちる
- “性能優先”→ 本体が熱すぎて持てない
という選択を迫られることになります。
■ 今後発売される主流スマホはどうなる?
2025年世代のハイエンド機は全体的に発熱が大きく、長時間の高負荷で性能が落ちる例が多く見られました。
そして今回の検証から、8 Elite Gen 5でも状況は劇的には改善していないことが確認できます。
- ゲームや3Dアプリを長時間プレイ → 速度低下の可能性
- 120fps対応ゲームや重いエミュレーターでは発熱が顕著
短時間だけ見ると最強クラスですが、“持続性能”は端末側の冷却設計次第と言えます。
■ 結局、今年のハイエンドはどう選ぶ?
今回の結果を簡潔に整理すると、
- 最高性能を狙うなら、冷却性能が強いゲーミング寄りモデルが有利
- 一般的な薄型・軽量フラッグシップは、ある程度の性能低下を覚悟
- 仕様表だけでは“実際の体感”は判断できない
Snapdragon 8 Elite Gen 5自体はポテンシャルの高いチップですが、それを活かすには端末メーカーの熱設計がこれまで以上に重要になります。2026年モデルが続々登場してくる中で、「実際にどれだけの性能を維持できるのか」は、今後注目すべきポイントとなりそうです。

