Samsungが、スマートフォンのデジタルズームで失われた細かな質感を補い、写真をより自然に見せるための新技術を特許出願しました。
デジタルズームでは、画像の一部を切り出して拡大するため、被写体の細かなディテールが失われやすく、肌や建物の壁などが過度に滑らかになってしまうことがあります。今回の技術は、画像内の領域ごとに適切な粒状感(グレイン)を追加することで、こうした不自然さを改善するものです。
画像の場所や明るさに応じて粒状感を調整

今回の特許は、米国特許商標庁(USPTO)で公開されたSamsungの出願情報から明らかになったもので、海外サイトPatentlyzeが発見しました。
技術のポイントは、画像全体に一律のノイズを追加するのではなく、被写体や撮影条件に応じて粒状感を細かく調整することです。
まず、AIが画像内の肌や空、衣服などの被写体を認識し、それぞれの領域が持つ本来の質感や粗さを分析します。その情報を基にテクスチャマップを作成し、さらに明るさやズーム倍率、センサーゲイン、被写体やカメラの動きなどを考慮したウェイトマップを生成します。
これによって、画像内のピクセルごとに追加する粒状感の強さを決定します。
例えば、明るく撮影された顔などには粒状感をほとんど追加せず、暗い場所にある壁などには適度な粒状感を加えます。また、暗所撮影ですでにセンサー由来のノイズが発生している場合は、不要なノイズをさらに追加しないように調整する仕組みです。
フィルム粒子やセンサーノイズなどをAIで使い分け
粒状感の種類についても、機械学習モデルを利用して画像の領域ごとに選択する仕組みが説明されています。
具体的には、フィルム特有の粒子感やセンサーノイズ、フラクタルノイズなどを使い分けることで、被写体に適した自然な質感を再現します。
さらに、静止画だけでなく動画への応用も想定されています。
動画では、壁など動かない被写体に追加した粒状感がフレームごとに変化すると、ノイズがちらついて見える問題があります。今回の技術では、静止している領域の粒状感をフレーム間で維持することで、こうしたちらつきを抑えるとしています。
望遠カメラを持たないGalaxyにも恩恵か
興味深いのは、この特許が望遠カメラを搭載していないスマートフォンについても言及している点です。
SamsungのGalaxyシリーズでは、望遠カメラを搭載しないミドルレンジモデルも多く、遠くの被写体を撮影する際にはデジタルズームへの依存度が高くなります。
そのため、今回の技術が実用化されれば、ハイエンドモデルだけでなく、Galaxy Aシリーズなどの比較的手頃なモデルでも恩恵を受けられる可能性があります。
一方、フラッグシップモデルでは30倍や100倍といった高倍率ズームを利用する場面があり、拡大によって失われるディテールを自然に補う技術の重要性が高まっています。
Samsungは2020年発売のGalaxy S20 Ultraで100倍ズームを導入して以来、デジタルズームの改善に取り組んできました。最新のGalaxy S26 Ultraでも、AI Zoomによってリアルタイムにディテールを再構成する機能を採用しています。
今回の特許も、こうした取り組みの延長線上にある技術といえそうです。
ただし、現時点ではあくまで特許出願であり、実際にGalaxyスマートフォンへ搭載されることが決まったわけではありません。
スマートフォンのカメラでは、AIによって細部を補完する技術が進化する一方、過度な補正によって写真が不自然になることも課題になっています。今回の技術は、単純に解像感を高めるのではなく、適切な粒状感を加えることで自然な質感を取り戻そうとする点が興味深いところです。今後、実際の製品に採用されるのか注目されます。
