
Appleは長年、Macにタッチスクリーンを搭載することに慎重な姿勢を示してきました。しかし、初のタッチ対応MacBook Proの投入にあたり、同社はその方針を転換する理由を明らかにしています。米Wiredが10月28日に公開した独占インタビューでは、CEOのJohn Ternus氏らが、タッチ操作をMacに取り入れる技術的な条件が整ったと説明しました。
記事では、MacBook Proの設計思想が変化した背景に加え、Apple製品をめぐるBloombergのMark Gurman氏と独立系アナリストNeil Cybart氏の対立についても触れられています。
Appleがタッチスクリーン搭載に踏み切った理由
Appleはこれまで、一般的なノートPCにタッチスクリーンを搭載することに否定的でした。元マーケティング責任者のPhil Schiller氏は、垂直に近いディスプレイへ手を伸ばす操作は快適ではなく、macOSはマウスやトラックパッドによる精密な操作を前提に設計されていると説明していました。
Ternus氏自身も2021年時点では同様の考え方を支持していましたが、現在はタッチ操作を従来の入力方法を補完するものと捉えています。
方針転換の鍵となったのは、タッチスクリーンを採用してもMacBook Proの厚さや重量を増やさず、従来の設計上の利点を損なわないようにできるかどうかでした。
ハードウェア部門を率いるJohny Srouji氏はWiredの取材に対し、Apple独自のシリコン技術やディスプレイ技術、ソフトウェア設計の進歩によって、ようやく実現可能になったと説明しています。
新型MacBook Proでは、タンデムOLEDディスプレイを採用するとともに、タッチ操作時に画面が不快なほど熱くならないよう、放熱システムを再設計しています。また、画面を指で押した際の揺れを抑えるため、ディスプレイのヒンジも強化されています。
macOSの操作体系は維持しながらタッチに対応
Appleは、MacをiPadのような操作体系へ変更するのではなく、従来のmacOSにタッチ操作を組み込む方針です。
例えば、画面上のメニューやウィンドウの操作部分は、指で触れると選択しやすいように拡大します。クリエイティブ系アプリでも、画面を直接操作できるようになり、DaVinci Resolveのカラー調整やLogic Proのオーディオ関連機能などで活用できます。
さらに、Macに導入されるDynamic Islandでは、タッチジェスチャーによって進行中のアクティビティーやSiriの応答、Spotlightなどへアクセスできるとされています。
マーケティング責任者のGreg Joswiak氏は、特にプロフェッショナルユーザーの間でタッチ操作への期待が高まっていたと説明しています。iPhoneやiPad、Macを併用するユーザーが増えるなか、複数のデバイスで一貫した操作体験を求める声も背景にあるようです。
一方、タッチ対応モデルは高価格帯に位置付けられます。記事によると、14インチモデルは2,899ドル、16インチモデルは3,399ドルからとなっています。
Mark Gurman氏とNeil Cybart氏の対立
Wiredの記事では、タッチ対応MacBook Proの話題に加え、Appleをめぐる報道や分析のあり方をめぐる対立も取り上げられています。
BloombergのMark Gurman氏は、Apple製品に関する調査報道で知られる記者です。一方、Neil Cybart氏はAppleの事業や財務を分析する独立系アナリストで、今回のMacBook Proについても、初期説明を受けた立場から高価格帯の新製品に対する専門ユーザーの評価に期待を示していました。
これに対しGurman氏は、Cybart氏が独立した立場を掲げながら、Apple側に都合のよいメッセージを広めているのではないかと批判しています。
両者の対立は今回の記事だけに限ったものではありません。10月23日には、Cybart氏がiPhone Duoの発売をめぐるGurman氏の報道を批判し、Appleの製品戦略を過度に否定的に描いていると主張していました。
また、Gurman氏は8月のやり取りでも、Cybart氏の金銭的な独立性に疑問を呈しています。自身はAppleから報酬を受け取ったことも、同社株を保有したこともないと述べ、Cybart氏にも同様の説明ができるのかと問いかけました。
ただし、こうした発言だけでCybart氏がAppleから報酬を受け取っている、あるいは同社株を保有していると判断できるわけではありません。現時点で、記事中の対立は両者の見解の違いとして捉える必要があります。
Macの進化は今後どこまで広がるのか
今回の方針転換は、AppleがMacの従来の操作体系を維持しながら、新たな入力方法を追加しようとしていることを示しています。タッチ操作を採用する一方で、キーボードやトラックパッドを中心とした使い方も引き続き重視する構えです。
ただし、タッチスクリーンが今後、より手頃な価格のMacBookにも広がるのかは明らかになっていません。Ternus氏は将来の製品について具体的な説明を避けており、当面は高価格帯のMacBook Proを中心とした機能になる可能性があります。
長年維持してきた方針を変更したAppleが、タッチ操作をMacの標準的な機能として広げていくのか、それとも上位モデルの差別化要素として扱うのか、今後の製品展開が注目されます。

