
AIブームによって急騰しているメモリ価格について、Samsung Electronicsの元半導体責任者が「想定より早く大幅下落に転じる可能性がある」との見通しを示しました。背景には、中国メーカーによる大規模な生産拡大があります。
AI需要がDDR5価格を押し上げ
ここ1年ほど、PC向けメモリ市場では異常ともいえる価格高騰が続いています。
最大の要因はAI市場の急拡大です。AI向け半導体で必要とされるHBM(高帯域幅メモリ)の需要が急増したことで、多くのメモリメーカーが生産ラインをAI向けへ振り分ける状況になっています。
その結果、一般PC向けのDDR5メモリ供給が圧迫され、市場価格が急騰。自作PCユーザーやゲーミングPC市場にも大きな影響が出ています。
元Samsung半導体トップが価格反転を予測
こうした状況について、Kye-hyun Kyung氏は韓国工学アカデミーのフォーラムで、2027年後半に価格が大きく下落する可能性があると語りました。
同氏は現在、Samsungのエグゼクティブアドバイザーを務めており、かつては半導体事業を率いた業界の重要人物として知られています。
価格下落の最大要因として挙げられたのが、中国企業による積極的な設備投資です。
中国メーカーの増産攻勢が市場を変える可能性
現在、中国ではDRAMの国産化強化が急速に進められています。
特にChangXin Memory Technologies(CXMT)やJiahe Jinweiといった企業が大規模投資を進めており、生産能力の急拡大が見込まれています。
もし計画通りに供給量が増加すれば、現在の供給不足は一転して供給過剰へ向かう可能性があります。
予測では、2027年後半には世界全体の生産能力が月間600万枚規模のウェハー処理能力に達するともいわれています。
AI投資鈍化で一気に供給過剰化する懸念も
一方で、急激な増産にはリスクもあります。
Kye-hyun Kyung氏は、現在の市場が巨大テック企業によるAI投資に強く依存している点を問題視しています。
もしAI関連ビジネスの収益性が低下し、企業が設備投資を縮小した場合、メモリ需要は急減する可能性があります。そうなれば、市場は一気に供給過剰局面へ転落しかねません。
現在のメモリ不足と価格高騰が、将来的には逆に大規模な価格崩壊につながる可能性もあるというわけです。
韓国半導体業界にも戦略転換を提言
Kye-hyun Kyung氏は、韓国半導体業界に対しても、単純なメモリ依存からの脱却が必要だと訴えています。
今後は先端技術開発やファブレス分野の強化、自国AI基盤の整備などへ軸足を移すべきだと指摘しており、地政学リスクへの対応力強化も重要だとしています。
AIブームによって急成長を続ける半導体市場ですが、その裏ではすでに次の価格調整局面を見据えた動きが始まっているようです。

