
AI開発競争の最前線に立つGoogleで、異例とも言える人事が明らかになりました。報道によると、同社はAI向けハードウェアに不可欠な高性能メモリの調達に失敗したことを理由に、複数の調達部門幹部を解任したとされています。背景には、世界的な半導体不足と、供給網を巡る判断の遅れがありました。
AI開発を左右する高帯域幅メモリの確保
問題となったのは、AI処理用チップに欠かせない高帯域幅メモリ、いわゆるHBMです。HBMは大量のデータを高速で処理するために必要な特殊メモリで、AI向け半導体では事実上の必須部品となっています。
関係者によれば、Googleの調達責任者らは、SamsungやSK hynixといった主要メーカーと十分な長期契約を結ばないまま需要の急増を迎え、その結果、必要な数量を確保できなかったとされています。気付いた時には、競合他社がすでに供給枠を押さえており、追加調達は困難な状況だったようです。
半導体争奪戦は外交問題の様相に
HBMを製造できる企業は世界でもごくわずかで、事実上3社に限られています。このため、状況は単なる商談を超え、熾烈な争奪戦へと発展しています。
韓国メディアの報道では、Googleだけでなく、MicrosoftやMetaの関係者もSamsungやSK hynixの本社周辺に長期間滞在し、供給確保に奔走していると伝えられています。中には、条件が折り合わず交渉の場を離席する幹部もいたとされ、各社がいかに切迫した状況にあるかがうかがえます。
資金力だけでは解決できない現実
AI分野では巨額の投資が続いていますが、今回の件は、潤沢な資金があっても物理的な供給制約は超えられないことを浮き彫りにしました。HBMの生産能力はすでに来年分まで埋まっており、他社から追加で調達することは不可能だと明確に断られたとも言われています。
現地重視へと変わる人材戦略
再発防止に向け、Googleを含むテック大手は調達体制の見直しを進めています。これまでのように米国本社から一括管理する体制ではなく、韓国や台湾といった半導体生産拠点に常駐できる専門人材の採用を強化する動きが出ています。
現地で技術的背景を理解しつつ、交渉にも精通した人材を配置することで、次の供給逼迫を早期に察知し、先手を打つ狙いがあるとみられます。
今回の一件は、私たちが日常的に使っているAIサービスの裏側で、ハードウェア調達という見えにくい要素がいかに重要かを改めて示しています。どれほど高度なAI技術を持っていても、それを支える半導体がなければ実現できないという現実が、経営判断の厳しさとともに浮かび上がっています。

