
子どもにスマートフォンを持たせるべきか——多くの親が悩むこのテーマに、明確な指標となり得る新たな研究結果が加わりました。アメリカ小児科学会(AAP)が発表した調査によると、12歳までにスマホを持ち始めた子どもは、うつ症状や肥満、睡眠不足のリスクが高まることが明らかになりました。
約1万人を対象とした大規模研究で判明した傾向
今回の調査は、米国史上最大規模の子どもの脳発達を追う「Adolescent Brain Cognitive Development Study(ABCD研究)」のデータを利用したもので、対象人数は1万500人以上。
その結果、スマホを持ち始める年齢が早いほど、肥満や睡眠障害のリスクが上昇する傾向が確認されました。
また、12歳時点でまだスマホを持っていなかった子どもに着目し、13歳で初めてスマホを所持したグループを追跡したところ、スマホを持たない同年代と比べてメンタルヘルスに不安定な傾向がみられ、睡眠の質も悪化していたといいます。
“原因”は未確定だが、背景には行動変化の可能性
研究チームは明確な因果関係までは断定していないものの、先行研究から「スマホ所持により運動時間や対面交流が減り、睡眠時間も短くなる」といった行動の変化が影響している可能性を指摘しています。
ただし、研究者は「12歳前後でスマホを持たせてしまった家庭を責める意図はない」と強調。
フィラデルフィア小児病院の児童・思春期精神科医であり、今回の研究の主筆であるラン・バーシレイ医師は、次のように話しています。
「12歳の子どもと16歳の子どもは、大人が思っている以上に発達段階が異なります。スマホを持たせる“年齢”は非常に重要です」
専門家が提案する “最初の一歩” は「寝室からスマホを追い出す」こと
カリフォルニア大学の小児科医ジェイソン・ナガタ氏は、家庭でできる対策として**「子どもの寝室からスマホを置かせない」**ことを推奨しています。
彼が参加した2023年の研究では、11〜12歳の63%が自室に電子デバイスを持ち込んでおり、そのうち約17%が通知で夜中に起こされていたという結果も。
睡眠の質を確保するための環境づくりは、健康面でのリスク低減にもつながると見られています。
企業や行政も動き始めた「子どもとスマホ」問題
近年、主要プラットフォームも年齢制限の強化を進めています。
- YouTube:AI・年齢確認システムを導入し、未成年利用を抑制
- Google:アカウント作成時のAI年齢検証を強化
- 米ニューヨーク州:2024年に“子どもの過度なスクロール抑制法案”を可決
社会全体で、子どものデジタル接触を見直す動きが広がりつつあります。
スマホデビューの時期、どう考えるべきか
今回の研究は、「スマホを与えるなら何歳が適切なのか」という判断に新しい視点を与えています。ただし、スマートフォンは現代の子どもたちにとって不可欠なコミュニケーションツールでもあり、完全に遠ざけることが正解とも限りません。
重要なのは、
“いつ与えるか”と“どう使わせるか”を家庭内で丁寧に考えること。
睡眠環境づくりや利用ルールの設定など、親ができる対策も多くあります。
スマートフォンとの付き合い方が、子どもの成長により良い影響を与えるかどうか——。年齢だけでなく、使い方のバランスが問われる時代になっているようです。

