Appleが、折りたたみディスプレイの背面を支える新しい構造に関する技術を検討していることが、特許出願の内容から明らかになりました。ディスプレイの平らな部分では高い剛性を確保しながら、ヒンジ部分だけを意図的に柔軟にするという考え方で、将来の折りたたみiPhoneへの応用も考えられる技術です。

ただし、今回の特許が新たに登場した折りたたみiPhone Duoに採用されていることを示すものではありません。出願内容には複数の素材や構造が幅広く記載されており、現時点では特定の製品向けに完成した設計というより、Appleが将来の折りたたみデバイスに向けて研究している技術群と見るのが適切です。
硬い素材をあえて曲げられる構造に
折りたたみスマートフォンのディスプレイでは、画面の大部分には高い剛性が求められる一方、中央のヒンジ部分には繰り返し曲げられる柔軟性が必要になります。
一般的なポリマー製の支持層は曲げやすい反面、十分な剛性を確保しにくいという課題があります。そこでAppleは、ガラスやカーボンファイバー、ガラス繊維、チタン、サファイアなど、より高い弾性率を持つ素材をディスプレイの支持層に利用する方法を検討しています。
特に興味深いのが、ガラスを柔軟なディスプレイの背面支持層として利用する構造です。
Appleが想定するガラス製の支持層は、画素アレイの背面に配置され、弾性率はおよそ50~300GPaとされています。ただし、層全体を均一に柔らかくするのではなく、ディスプレイの左右にあたる部分は高い剛性を維持し、ヒンジの直下だけを意図的に曲げやすくする設計です。
これを実現する方法として、素材の厚さを変えるほか、異なる素材を組み合わせたり、補強構造を組み込んだり、繊維の方向や織り方を変更したりする案が示されています。
ヒンジ部分だけを薄くする案も
別の構造では、ディスプレイが折れ曲がる部分だけ支持層を薄くする方法も検討されています。
ガラス製の支持層にスロットや凹部、開口部などを設け、折り曲げ軸に沿って柔軟性を持たせる構造です。周辺部分のガラスがディスプレイを支えながら、中央に設けたパターンによって繰り返しの折り曲げに対応します。
つまり、単純にディスプレイの背面へ柔らかなシートを配置するのではなく、支持部材そのものの機械的特性を場所によって変化させるという発想です。
ガラスだけでなくカーボンファイバーなども検討
Appleは、今回の技術を特定の素材だけに限定していません。
例えば、ガラス繊維を異なるポリマーに埋め込む構造では、平らな部分に比較的硬いポリマーを使い、ヒンジ部分にはより柔らかな素材を配置する方法が考えられています。
カーボンファイバーを利用する案では、平らな部分と折り曲げ部分で織り方を変え、ヒンジ部分では折り曲げ軸に沿って曲がりやすくなるよう繊維の方向を調整します。
さらに、ディスプレイの外側部分には補強用の柱を埋め込みながら、折り曲げる中央部分には柱を配置しない構造も検討されています。
ガラスとポリマーを同一層に組み合わせる方法もあり、左右の平坦な部分には固いガラスを配置し、その間にある隙間をポリマーで埋めて柔軟なヒンジ領域を形成する案などが記載されています。
このほか、ディスプレイ全体に薄いガラスシートを配置したうえで、外側部分だけに追加のガラス層を重ね、折り曲げ部分には追加層を設けない多層構造も想定されています。
こうした複数の構造に共通しているのは、ディスプレイの外側2領域を中央の折り曲げ部分よりも硬くするという考え方です。
金属製バックプレートをなくせる可能性も
今回の特許で特に注目されるのが、新しい支持層によって従来の金属製バックプレートの役割まで置き換える構成です。
平らな部分では支持層を厚くし、ヒンジ部分では薄くすることで、外側には十分な剛性を持たせながら中央だけを曲げやすくします。Appleは、高い弾性率を持つ素材を利用することで、柔軟性を維持しつつディスプレイの強度を高められると説明しています。
さらに、この支持層によって金属製バックプレートそのものを置き換えられる可能性にも言及しています。
実際に採用されれば、ディスプレイ下に重なる構造部品を減らせるため、端末の薄型化や内部スペースの確保、軽量化につながる可能性があります。ただし、今回の特許では具体的な薄さや重量の削減量までは示されていません。
ガラスの端部についても、Appleは耐久性を高めるための複数の方法を検討しています。面取りによって応力集中を抑えたり、化学的なイオン交換処理で圧縮強度を高めたり、保護用の樹脂コーティングで端部を覆ったりする構造が記載されています。
iPhone Duoへの搭載を示すものではない
今回の技術が新しいiPhone Duoに搭載されていると判断することはできません。
特許文書に記載された最初期の仮出願は2025年4月と5月のものとされており、今回の出願よりかなり前から研究が進められていたことは分かります。そのため、Appleの初代折りたたみiPhoneの開発と一部の技術が重なる可能性はあります。
しかし、特許出願は特定の製品に実際に採用されたことを意味するものではありません。今回の文書でも、ガラス、ガラス繊維、カーボンファイバー、チタン、ポリマー、形状記憶合金など多くの素材が候補として挙げられ、ヒンジ部分を柔軟にする方法についても複数の案が示されています。
そのため、現時点ではiPhone Duoに採用された技術と断定するよりも、Appleが将来の折りたたみデバイスに向けて開発している基盤技術の一つと見るのが自然です。
今回の研究で注目されるのは、柔軟なディスプレイを単に柔らかい素材で支えるのではなく、背面の支持層そのものに場所ごとの役割を持たせようとしている点です。端末としての剛性が必要な部分は硬くし、折りたたむ場所だけを意図的に柔軟にすることで、ディスプレイの耐久性と端末設計の自由度を両立させようとしています。
こうした技術が将来のiPhone Duoに採用されれば、折りたたみiPhoneの薄型化や軽量化、内部構造の簡素化につながる可能性があります。ただし、今回の特許から実際の製品仕様を判断することはできず、今後の製品世代でどの構造が採用されるのかが注目されます。

