
イーロン・マスク氏が、AI向けメモリの価格設定をめぐり、Micron Technologyを評価する一方、競合メーカーの値上げを厳しく批判しました。AIデータセンターの建設ラッシュでメモリの需要が急増するなか、供給不足を背景とした価格上昇が続いています。マスク氏は、短期的な利益を優先した値上げが、将来的に顧客との関係を損なう可能性があると指摘しています。
Micronを評価、競合メーカーの値上げを批判
今回の発言は、米金融大手JPMorganの市場分析レポートを受けて、マスク氏がXに投稿したものです。マスク氏は、Micronが今後のDRAMや広帯域メモリ(HBM)の価格を適切な水準に保っているとして、その姿勢を評価しました。
一方、競合メーカーによる値上げについては、顧客に過度な負担を強いるものだと批判。供給不足に乗じた価格引き上げは、長期的な顧客の信頼を失うことにつながりかねず、Micronは顧客との関係を強化するうえで賢明な戦略を取っているとの見方を示しました。
マスク氏は投稿内で批判対象の企業名を明示していません。ただし、世界のメモリ市場ではMicron、Samsung Electronics、SK hynixの3社が主要メーカーとして大きな存在感を持っています。AI向け半導体の需要が急増している状況を踏まえると、競合メーカーの価格設定を念頭に置いた発言とみられます。
AI需要の急増でメモリ価格が大幅上昇
メモリ価格の高騰を引き起こしている大きな要因は、AIインフラへの投資拡大です。NVIDIAのAI向け半導体や、大規模なAIデータセンターの構築には大量の高速メモリが必要になります。
Counterpoint Researchのデータとして記事が紹介した数字によると、DRAMやHBM、NANDフラッシュの価格は過去1年間で80~90%上昇しました。AI向けメモリの需要が供給能力を上回り、メーカーが価格を引き上げやすい状況になっています。
この影響は、AI関連企業だけにとどまりません。メーカー各社が利益率の高いAI向けメモリの生産を優先すると、一般的なノートPCやスマートフォン、ゲーム機などに使われるDRAMの供給も圧迫されます。その結果、消費者向け製品の製造コストにも上昇圧力がかかる可能性があります。
供給不足は2028年まで続くとの見方も
JPMorganのアナリストは、HBMの供給不足が2026年も約20%の水準で続き、2028年まで長引く可能性があると予測しています。また、世界のAI向けメモリ市場は4倍に拡大し、2,820億ドル規模に達するとの見通しも示されています。
こうした状況を受け、大手テクノロジー企業は将来の供給量を確保するため、メモリメーカーとの長期契約を進めています。
Micronは、2027年までの生産量の75%超を対象とする26件の長期供給契約を締結したと説明しています。TeslaやSpaceXなど、マスク氏が率いる企業にとっても、必要なメモリを安定して調達できるかどうかは重要な課題です。
Samsungも生産量の60~70%を長期契約で確保しているとされ、SK hynixも同様の動きを進めています。ただし、長期契約によって供給量を確保できても、価格が高止まりすれば、メモリを大量に調達する企業の負担は重くなります。
マスク氏の今回の発言は、供給不足が続く局面での価格設定が、メーカーと顧客の長期的な関係にも影響することを示しています。今後、生産能力の拡大によって供給が改善した際、顧客がどのメーカーを優先するかは、現在の価格交渉や取引姿勢にも左右される可能性があります。AI向け半導体の需要拡大はメモリメーカーにとって大きな商機ですが、値上げによる利益確保と顧客との信頼関係をどう両立するかが問われています。


