
Googleは9月30日、次世代のフロンティアモデルとなる「Gemini 4 Argon」を発表しました。複雑で長時間にわたるタスクの推論を重視したモデルで、コーディングや知識業務、サイバーセキュリティ、クリエイティブ分野などで高い性能を発揮することを目指しています。
Gemini 4 Argonではモデルの命名体系も変更されており、これまでのGemini 3.5 ProのキャンセルやGemini 3.8 Flashへの注力に続く、新たな世代のモデルとして位置付けられています。
最大100万トークンの出力に対応
今回のモデルで特に大きな変更となるのが、出力可能なトークン数です。
Gemini 4 Argonは最大100万トークンの出力に対応しており、従来の6万4,000トークンから大幅に拡張されています。Googleによれば、非常に長い推論や大量のコード生成を1回の処理で実行できるようになり、複雑な問題をより深く掘り下げて解決できるとしています。

コーディングや推論性能に加えて、マルチモーダル処理能力も強化されています。
ベンチマークでは、ソフトウェアエンジニアリング能力を評価するDeepSWE v1.1で77.9%を記録したとGoogleが説明しています。同社が公開した比較では、Claude Opus 5.5が74.2%、GPT-6 Astraが74.1%となっています。
また、金融分野の調査や法律文書の作成、企業業務の自動化、長時間の動画理解など、特定分野を対象とした評価でも高い性能を示したとしています。
AutomationBenchでは51.3%を記録し、企業の主要業務をエンドツーエンドで実行する能力で首位になったとGoogleは説明しています。長時間動画の理解能力を評価するLVBenchでは91.7%を記録したとのことです。
サイバーセキュリティにも重点
Gemini 4 Argonでは、サイバーセキュリティ分野も重要な用途の一つに設定されています。
Googleによると、前世代のGemini 3.8 Flash Cyberからセキュリティ関連の能力を大きく向上させており、脆弱性の発見や修正などを対象とするCWE-bench v1では68%を記録し、トップと並ぶ結果になったとしています。
一方で、こうした高い能力を悪用されるリスクもあることから、Googleは一般提供に先立って複数の安全対策を導入しています。
現在は信頼できるテスターやサイバーセキュリティの防御担当者を対象に提供しており、Google DeepMindのFairwind Programなどを通じて実運用を想定した検証を進めています。
具体的には、サイバー攻撃だけでなく、化学・生物・放射性物質・核兵器(CBRN)関連への悪用を検知するための監視技術を強化しています。
また、間接的なプロンプトインジェクション攻撃への耐性も高めており、モデル内部の状態を監視して不正利用の兆候を検出する仕組みや、必要に応じて処理を停止する対策も導入しています。
高リスクなトレーニングや評価を行う際には、サンドボックス環境を分離・保護するなど、システム側の対策も強化しているとのことです。
Google社内でも大規模な活用が進む
Gemini 4 ArgonはすでにGoogle社内でも利用されており、数千人の従業員が専門的なコーディングや調査、文章作成などに活用しているといいます。
その一例としてGoogleが紹介したのが、データセンターのメモリ効率化です。複数のArgonエージェントがデータセンター全体のプロファイリング情報を分析し、メモリ使用量を削減する最適化を自律的に特定・適用した結果、導入後には300TiB以上のメモリを削減できる見込みだとしています。最終的な削減量は500TiBから1PiBに達する可能性があるとのことです。
また、大規模なコードベースをC/C++からRustへ移行する作業にも活用されています。対象はGoogleの主要ライブラリからFuchsia OSのZirconカーネルまで広がっており、最大で80万行を超えるコードの移行にも取り組んでいるとしています。
動画デコーダー「libgav1」では、既存のRust実装をベースに3万2,000行のSIMDコードを置き換えました。プロファイル情報を使った実験やコンパイラ出力の分析を繰り返し、安全なRustコードによってコンパイラが自動的にベクトル化できる構成を目指した結果、従来のRust版と同じ映像出力を維持しながら、処理速度を2.7倍に向上させたとGoogleは説明しています。
料金は期間限定で安く設定
Gemini 4 Argonは近日中に順次提供される予定で、まずGoogle AI Ultraの加入者と有料API利用者が対象となります。
API料金は導入期間中、入力100万トークンあたり2ドル、出力100万トークンあたり10ドルに設定されます。キャッシュされた入力トークンについては、通常の入力料金から95%割り引かれます。
導入期間終了後は、入力100万トークンあたり4ドル、出力100万トークンあたり20ドルへ引き上げられる予定です。
GoogleはGemini 4 Argonを、単なるチャット用途にとどまらず、長時間にわたる複雑な調査や大規模なソフトウェア開発、企業業務の自動化まで担うモデルとして展開しようとしています。
特に100万トークンという大幅に拡張された出力上限と、コーディングやセキュリティ分野への重点は大きな特徴です。今後、一般ユーザーや開発者への提供が始まることで、実際の処理性能や長時間タスクにおける実用性がどこまで発揮されるのか注目されます。

